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ベンゲルがイングランド代表監督に!?
前任者のスキャンダル退任が好機に。

posted2016/10/08 08:00

 
ベンゲルがイングランド代表監督に!?前任者のスキャンダル退任が好機に。<Number Web> photograph by Getty Images

アーセナルで1000試合以上の指揮をとるベンゲルは、まさにレジェンド。イングランド代表にとっては最高の適任者だが……。

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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 10月8日の2018年ロシアW杯予選マルタ戦では、ウェンブリー・スタジアムに集まるイングランド・ファンにTシャツが配られるはずだった。

 FA(フットボール協会)が用意したTシャツの胸には「力を合わせて歩み始めよう」という意味のメッセージが入っていたという。前月のスロバキア戦(1-0)で、イングランド代表監督としての初陣を予選白星発進で飾ったサム・アラダイスの言葉だ。

 しかし、当日のベンチで指揮を執ったのは、今夏までU-21代表を率いていたガレス・サウスゲートで、Tシャツは廃棄処分。イングランドは、11月15日のスペインとの親善試合まで年内残り4試合を、暫定体制で乗り切るはめになった。

 現地時間9月27日の夜に決まったアラダイス退任は、「お粗末」の一言だ。たった1試合しか采配を振るえなかった前監督は、初練習で実務に当たる前、『テレグラフ』紙が仕掛けたおとり取材で餌食となり、就任から僅か2カ月余りで離任を余儀なくされた。当人は「してやられた」と話しているが、根本的な原因は、自らの「傲慢」と「強欲」という二言。同情の声は極めて少ない。

おとり取材に引っかかり、愚かな発言のオンパレード。

 おとり取材の顛末はこうだ。まずアラダイスは、極東で代理人ビジネス参入を狙う実業家に扮した記者から接触を受けた。40万ポンド(約5600万円)の報酬で、出張講演を含むアドバイザー契約の話を持ちかけられた。基本給だけで年に300万ポンド(約4.2億円)を稼ぐ代表監督職に就いたばかりで、しかもその仕事を、候補止まりだった2006年の監督交代時から10年越しで手に入れた「夢」とまで言っていた人物にすれば、取り合う必要などなかったはずだ。

 ところが、イングランド代表監督のステータスを持つが故の旨い話に欲をかいたとしか思えないアラダイスは、偽実業家と1度ならず2度までも計4時間にわたる会合を持ち、映像に収められた。その言動に、代表監督としての契約違反があったわけではない。

 しかし、選手の第三者保有を禁ずるFAの在り方を「馬鹿げている」と非難した上で「抜け道はある」と指摘した発言から、前任者のロイ・ホジソンやFA総裁を務めるウィリアム王子に関する批判的な発言まで、愚かな発言のオンパレード。

 雇い主であるFAから、名誉ある代表監督として取り返しのつかない「モラル違反」を犯したと判断されたのも当然だ。

【次ページ】 理想を言えば母国人の監督を招聘したい。

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