プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ベンゲルがイングランド代表監督に!?
前任者のスキャンダル退任が好機に。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2016/10/08 08:00
アーセナルで1000試合以上の指揮をとるベンゲルは、まさにレジェンド。イングランド代表にとっては最高の適任者だが……。
理想を言えば母国人の監督を招聘したい。
結果として、今夏のEURO2016でアイスランドに引導を渡されていたイングランドは、アラン・シアラーの言葉を借りれば「ピッチ外でも世界中の物笑いの種」となり、「これ以上落ちることなど不可能だと思われたところから、更に深いドン底」へと突き落とされることになった。
終わったばかりの監督人事に再び着手することになったFAでは、マーティン・グレンCEOが「立派な正監督候補の1人」だとサウスゲートを評している。ライバルと目される候補者はスティーブ・ブルース(前ハル)、アラン・パーデュー(クリスタルパレス)、そしてエディー・ハウ(ボーンマス)といった顔ぶれ。
やはり、理想論で言えば母国人監督ということになる。サッカーの母国としてのプライドもさることながら、FAは4年前に1億ポンドを超す費用をかけてセント・ジョージズ・パークを開設し、国産指導者の育成に本腰を入れ始めたばかり。代表監督が外国人では、指揮官にも外国人が多いプレミアリーグの各クラブに「母国人指導者にチャンスを」と訴えたところで説得力を欠く部分もあるだろう。
ハウは哲学も勇気あるが「若すぎる」!?
但し、ユース代表監督からの内部昇格となり経路も理想的なサウスゲートについては、当人の就任意欲が怪しい。自ら「時期尚早」と訴えてFAのアプローチを嫌ったのはたった3カ月前のことだ。
今回の暫定監督指名を「光栄に思う」と快諾してはいるが、正監督としての進路はミドルズブラを去った'09年以来となる、どこかのクラブを考えているとも言われる。
であれば、国産の後任として白羽の矢を立てるべきは誰なのか。ブルースは、元DFとしての背景といい、プレミア残留と2部からの昇格がメインという監督としての実績といい、「新手のアラダイス」風の香りが漂う。
プレミア中位勢指揮官のイメージが強いパーデューには明確なスタイルがない。
その点ハウは、攻撃サッカーの哲学を持ち、信念を貫く勇気も備えている。38歳のプレミア2年生監督と経験は浅いが、ドン底からの再出発を強いられることになった現状を前向きに捉え、世代交代が進む代表チームを、このイングランド人青年監督に託しても良いと思われる。「強い愛国心の持ち主」を自認するハウは、代表監督への興味を公言してもいる。
問題は、つい数カ月前にハウが「若すぎる」と判断されたばかりであること。そこで、経験豊富なベテランで繋ぐ手を考えた場合に浮上する「大穴」が、アーセン・ベンゲルだ。