福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
福西崇史が分析するイラク&豪州戦。
清武&原口の可能性と、天敵ケーヒル。
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/10/11 10:30
トップ下として原口の先制点を導き出した清武弘嗣。岡崎らとのコンビネーションに磨きがかかれば、確実に日本の中軸を担う選手になれる。
清武は運動量とテクニックの両方を生かしきった。
<イラク戦の日本は、コンディション面で懸念された香川真司をベンチに置き、清武弘嗣をトップ下に起用。左サイドには原口元気が入った。前半26分にはその清武のラストパスから原口が先制ゴールを挙げるなど、両者はアタッカーとしての役割を果たした。2人の好パフォーマンスを称えつつも、より一層攻撃に迫力を出すための改善点があるという。それは、岡崎慎司との連係だ。>
これは以前から話していたところですが、ここ最近の清武からは「自分のプレーでチームを勝利に導いてやるんだ」というメンタル面の充実を強く感じます。それがあったからこそ昨季ハノーファーで多くの得点に絡むことができましたし、セビージャへの移籍も果たせたのだと思います。
イラク戦でも清武の特徴は出ていました。試合序盤からトップ下としてボールを引き出す動きを積極的に見せていました。そして先制ゴールの場面では、自陣からドリブルで持ち運んで、ボールを預けた本田(圭佑)の背中を回り込んでペナルティエリア深くまで入って、原口へのラストパスを通しました。運動量とテクニックの両方を持っている清武らしいプレーだったと言えるでしょう。
得点シーン以外にも前方へのスルーパス、思い切りのいいミドルシュートを放つなど“ゲームを動かしていく”意識を常に持っていました。この姿勢があるからこそ、味方も自然と清武にボールを集めようとしていました。
原口は前半と後半でプレースタイルを柔軟に変えた。
ゴールを奪った原口も、所属するヘルタでの好調ぶりをそのまま代表で見せてくれました。彼が向上したのは“今、ピッチでどんなプレーが自分に必要とされているのか”という点にあると思います。それは前半と後半のプレーぶりを比較すれば明確だと思います。
前半は本田、酒井宏樹に清武が絡む右サイドの攻撃が中心だったため、逆サイドの原口はゴール前に入り込む意識を強めていて、それが先制点につながりました。対照的にスペースが空いてきた後半は、対面の相手サイドバックとの1対1勝負に自信を持っていた。だからこそ左サイドに大きく開いて、ボールを受けてから得意のドリブル突破を仕掛けていった。パス回しだけでは崩れないイラクの守備組織を崩すため、効果的にプレーしていました。