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田中希実「異例の挑戦」の裏側で…“黄金世代のエース候補”ドルーリー朱瑛里(17歳)の現在地「選手としてだけじゃなく…人として成長したい」
posted2025/05/19 17:01

ゴールデングランプリ1500mで2位に入った田中希実(New Balance)。高校生ながら唯一の出場となったドルーリー朱瑛里は貧血の影響があったという
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph by
Nanae Suzuki
異例のスケジュールだった。
5月18日に国立競技場で行われたセイコーゴールデングランプリ。世界各国から有力選手が集まるこの大会で、“日本中距離界のエース”田中希実(New Balance)は、3000mのペースメーカーを務めたわずか1時間半後に1500mにも出場。4分6秒08の記録で2位に食い込んだ。
「ペースメーカーをした後だから……とかは関係なくて、地力の部分で勝てなかったです。2位集団の中で勝ち切れたのは良かったと思います」
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優勝したジョージア・グリフィス(オーストラリア)との差に本人はそう悔しがったが、日本人2番手の5位に入った木村友香(積水化学)とは実に4秒以上の差。日本の第一人者の実力を発揮してみせた。
事程左様に、現在日本の女子中距離界――特に1500mは、3分台の自己記録=日本記録を持つ田中がひとり大きく前を走る状況となっている。当人は反省の弁を述べたこの日のタイムであっても、田中以外の日本人選手は一度も到達していない水準の記録でもある。
高校生で唯一の出場となったドルーリー
一方でそんな状況の中、このゴールデングランプリには高校生から唯一、ドルーリー朱瑛里(津山高3年)が出場した。
レース後には「貧血の影響があって、なかなか自信を持って練習やレースに臨めていない」と本人が振り返ったように、4分23秒96で12位という結果には、本人も不完全燃焼という表情だった。
ただ、4月に出場した織田記念は4分36秒12で15位と、貧血の影響から明らかに本来の走りではなかった。その状態から万全ではない中でも修正し、この日のレースをしっかりまとめてみせたのは、高校生らしからぬ調整力だった。