野球善哉BACK NUMBER
筒香嘉智の成長を支えたある集団。
チームの“外”で成長するという発想。
text by

氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNanae Suzuki
posted2016/10/04 11:30

今年の筒香嘉智はOPSが1.1を越え、もちろんリーグ1位。名実ともに日本最高のバッターになったと言えるのではないだろうか。
日本の野球界を知るにつれ、危機感を抱く。
瀬野が経営するプロスペクト社は野球用品も幅広く取り扱っており、野球界とのつながりが深い。本人も野球経験があり、大学を卒業後に自身の父親が立ち上げた中学硬式クラブチーム「堺ビッグボーイズ」で監督・代表を務めたこともある。
その後、日本の野球界の在り方を知るうちに、まだやるべきことがあるのではないかと考えるようになっていた。
アマチュアの指導者に向けた講演会を開催するなど、若い世代の野球選手の成長も1つの大きな柱だった。
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瀬野は言う。
「いい素質を持っているのに、潜在的に持っている能力を発揮できていなかったり、どういう風に力を伸ばせばいいか分からない選手が多いと感じていました。特に今の日本は幼少期から野球に没頭しすぎていて、野球以外のことを知る機会が少なく、社会性を培う機会があまりありません。
選手も1人の人間だという観点にたち、そんな選手たちの成長をサポートしたい。私たちがやろうとしているのは、アスリートの成長を後押しするマネジメントです。筒香に関しても、僕が代表を務めている中学の硬式野球チーム(堺ビッグボーイズ)の出身というのもあって、彼の成長の後押しがしたいと思ってやってきました」
筒香のターニングポイントになったLAでの体験。
とはいえ、プロ球団にはすでに指導者がいて、そことは独立して成長を目指すわけだから、反発を招きかねないという危惧もあった。彼らの事業が表舞台で目立ってこなかったのは、筒香に悪い影響を与えないためでもあった。
その取り組みの初期に実現したのが、ロサンゼルスにある施設「アスリーツ・パフォーマンス・インスティテュート(現EXOS)」でのトレーニングだ。この経験が筒香に変革を起こした。
瀬野が回想する。
「今筒香の体を見ると、メジャーリーガーみたいになっているでしょ。当時はそうでもなかったんです。でも世界で通用するようなバッターという以前に、まずは日本で成功しないといけない。そのためにも身体づくりが必要でした」