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「控えでも代表招集しなければ……」
イングランド人選手の“内向き志向”。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2016/09/10 11:30

「控えでも代表招集しなければ……」イングランド人選手の“内向き志向”。<Number Web> photograph by Getty Images

U-21イングランド代表戦でハットトリックを決めたラッシュフォード。“国内組有望株”の筆頭格である。

「クラブの控え組も招集せざるを得ない」状況。

 海外に出ないことが悪いわけではない。特に、代表メンバーにプレミア先発レギュラー陣が揃っていれば話は別だ。ところがイングランドは、新監督のサム・アラダイスが「クラブの控え組も招集せざるを得ない」と認めている状態。識者間では、2部リーグからの招集が珍しくなくなる近未来さえ危惧されている。

 先のスロバキア戦には呼ばれなかったウィルシャーは、クラブと代表で未来を背負う存在と言われてきた24歳だ。故障続きでアーセナルでの序列が下がり続けたキャリアの再生地にボーンマスを選んだ理由を、「主軸扱いで自信の持てる環境が欲しかったのだろう」とする、スタン・コリモアのような元選手もいる。

 だが、プレミアほどフィジカルではなく忙しなくもないセリエAのピッチで、ボールを持ってビルドアップをコントロールしながら自信を取り戻していくという手もあったのではないだろうか?

“言葉の壁”を抱えるイングランド人サッカー選手。

 しかし、ウィルシャーが留まったように、イングランド人選手は海外移籍に消極的だ。ウィルシャーには、まだ子供も小さい家族持ちという理由もあったのかもしれない。12年前にレアル・マドリー移籍に踏み切ったマイケル・オーウェンも、スペイン生活が1年で終わった理由の1つに家族の帰国希望を挙げていた。とはいえ、若くして家庭を持つ傾向は、欧州大陸や南米の選手にも共通のはず。イングランド人が海外に出たがらない根本的な理由は、やはり言葉と待遇の違いだろう。

 世界の共通語である英語を母国語とするイングランド人には、一般的に若い頃から外国語の習得を敬遠し、かつ苦手意識を持つ人が多いと言われる。

 この国の人に筆者が3年間ほどベルギーに住んでいたことを話すと、よく「住みにくかったでしょう?」、「冷たい国だよね?」といった反応が返って来る。個人的なベルギー像は全く違うのだが、仕事や旅行で訪れた彼らの経験上は、あまり英語が通じない環境が「排他的」とさえ感じられてしまうようだ。

 一般人でさえそうなのだから、大学入試レベルの教育課程を修了している者は数えるほどしかおらず、外国語学習の基礎さえ乏しいイングランド人サッカー選手にとって言葉の壁は相当に厚い。

【次ページ】 “TVマネー”が潤うプレミアの方が給与面でも……。

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