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一度は失格の烙印を押されたが……。
森友哉は西武の正捕手になり得るか?
posted2016/09/07 11:30
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
Kiichi Matsumoto
一塁側ベンチ前でキャッチャーの捕球練習を終えると、一息つく間もなく、ミットをグラブに持ちかえて外野へと向かいノックを受ける。ピークは過ぎたとはいえ、まだ蒸し暑さの残る西武プリンスドーム。その顔からは、ぽた、ぽたと絶え間なく汗がしたたり落ちている。
森友哉は現在、キャッチャーと外野手、指名打者という3つのポジションで奮闘中だ。
昨シーズンは主に指名打者としてスターティングメンバーに名を連ね、DH制のない交流戦などで、主にライトを守った。138試合に出場し、2割8分7厘、17本塁打の好成績を残した。捕手としての出場は1試合もなかった。
メヒア、中村剛也を指名打者で起用したいというチームの思惑もあり「森を捕手として独り立ちさせる」という方針でスタートした今シーズン。春のキャンプ中も全体練習のあとはサブグラウンドに場所を移し、近距離から投げられたボールの捕球や、キャッチャーフライなどのノックに時間を費やしていた。しかし、キャンプ中の練習試合やオープン戦でミスを重ね、その様子を見た首脳陣が、打撃に専念させるために捕手起用を見送ると決定。外野の守備練習をしながら開幕を迎えた。早々に「捕手失格」の烙印を押された形となった。
ふたたび「捕手待望論」が囁かれるが……。
しかしここへ来て、将来的なことを見据え、捕手待望論がチーム内外から沸き起こっている。8月は高橋光成、多和田真三郎という若い投手限定でマスクをかぶり、試合に出場。二軍の試合が本拠地で行われる際には、二軍の球場が西武プリンスドームの隣ということもあり、午後1時試合開始のイースタン・リーグでマスクをかぶり、その後、ドームに移動して一軍のナイターゲームに出るという日々。方針が二転三転した、森にとっては苦しいシーズンだったに違いない。
選手の育成方針はチーム全体をプロデュースする役職の者が決めることである。誰かの独断で決定できるものではない。ファンによる「森捕手待望論」もあれば、同時に彼の打撃を生かすために「負担の少ない守備位置で」と唱える専門家も多い。意見は、森に関わる人の数だけ存在する。