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大輝と貴元がついにWRCデビュー!
成長途上のふたりが掴んだ手応え。 

text by

古賀敬介

古賀敬介Keisuke Koga

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photograph byTOYOTA

posted2016/09/02 14:00

大輝と貴元がついにWRCデビュー!成長途上のふたりが掴んだ手応え。<Number Web> photograph by TOYOTA

若い2人に一番必要なのは、まずは“経験”。海外での武者修行によって、ふたりは急成長している。

ペースを落としてでも絶対にすべてのSSを走りきれ!

 今シーズン、ふたりはフィンランド国内選手権を戦い、7月にはWRCのひとつ下のシリーズに位置づけられるERCのエストニア戦に出場。この時は、ふたりともクラッシュでリタイアを喫し、アンプヤからこっぴどく怒られたという。

 問題はクルマにダメージを与えたことではなく、せっかく長い距離を走ることができる貴重な機会を逃したこと。そのため、フィンランド国内選手権の2、3倍もの距離を走行するWRC第8戦ラリー・フィンランドでは、ペースを落としてでも絶対にすべてのSSを走りきるという厳命が与えられた。

 7月24日から31日に行われたラリー・フィンランドは世界最難関とも言われ、WRCトップドライバーでも恐怖を感じるようなコースが山ほどある。彼らが今まで戦ってきたフィンランド国内選手権と比べても、難易度ははるかに高い。

 SSの合計走行距離は約334kmと、国内選手権の2、3倍。それでも彼らふたりは着実にSSをクリアしていき、スピードは遅いながらも未知なるコースで貴重な実戦経験を積み重ねていった。結果、貴元は彼が参加したWRC2クラスで12位、総合27位というリザルトで完走を果たした。

「足りなかったものがはっきりと見えた」

 アンプヤのミッションを完遂した貴元は、充実感に満ちた表情で、次のように初WRCをふり返った。

「かなりペースを落として走ったので、ラリー初日はフラストレーションが溜まりました。しかし、2日目以降は遅いながらも長い距離を走る中で多くのことがわかってきた。ペースノート(コースの状態を記したノートで、コ・ドライバーがそれを走行中に読み上げる)の作りかたや、コースに対するアプローチなど、今まで自分に足りていなかったものがはっきりと見えてきた。全開で走っていたらきっと分からなかっただろうし、最後まで走りきれなかったかもしれないので、本当に良かったと思います。そういう発見もあって、2日目以降は走っていて楽しくて仕方がなかった」

 一方、ラリー終盤まで貴元よりも速いペースで上位を走行していた大輝は、フィニッシュまで残り2ステージというところでクラッシュ。目標としていた完走を果たすことができなかった。

「走行ラインがずれて石にぶつかり、サスペンションが壊れてしまいました。最後まで走りきれず残念です。でも、自分としては本当に多くのことを学んだラリーでした。ペースを落とすにしても、初日はスピードを下げ過ぎて逆にリズムを失ってしまった。そこで、2日目に少しペースを上げたらすべてが良くなった。長い距離の中でどれぐらいのペースで走らなければならないのか、理解することができたと思います。また、今まで自分は速いコーナーでフィンランド人に負けていたと思っていたけど、じつはそうではなくギヤが1、2速の遅いヘアピンコーナーやジャンクション(曲がり角)で大きくタイムをロスしていた。速く走らなければと、突っ込みすぎていたことに気付いたんです。もっとゆっくりとコーナーに入ったほうがタイムが出ると知って衝撃を受けました。この経験を次につなげたいですね」

【次ページ】 世界の頂点にはまだ遠いが……。

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