RALLYスペシャルBACK NUMBER
大輝と貴元がついにWRCデビュー!
成長途上のふたりが掴んだ手応え。
text by
古賀敬介Keisuke Koga
photograph byTOYOTA
posted2016/09/02 14:00
若い2人に一番必要なのは、まずは“経験”。海外での武者修行によって、ふたりは急成長している。
トミ・マキネンにすべてを託した育成プログラム。
ラリーチャレンジプログラムは、マキネン自身が立ち上げたトミ・マキネン・レーシング(TMR)を母体とする。
そのため大輝と貴元はフィンランドを活動の拠点とし、2年目となる今年はフィンランド国内選手権や、エストニアで開催されたヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)に出場して経験を積んでいる。そして、今年7月末に開催されたラリー・フィンランドで、ついにWRCデビューを果たした。
プログラム開始から1年半でWRCまで到達したと聞けば、かなり順風満帆だと感じるだろう。しかし実際は、彼らは世界の壁の高さを知り、悩み、苦しみ、もがいている。
ラリーが国技とも例えられるフィンランドの国内選手権は、サッカーならブンデスリーガやプレミアリーグのようなもの。そこに、日本育ちの選手がいきなり飛び込んだのだから、実力差を痛感するのは当然だ。いかに優れた才能を持っていたとしても、求められる技術、体力、精神力はそう簡単に身につくものではない。しかも、フィンランドのグラベル(未舗装路)コースは世界的に見ても、もっともスピードレンジが高く、難易度も高い。林の中の未舗装路をトップギヤでドリフトしたまま、先が見えないビッグジャンプを何度も飛ぶといった、日本では絶対に経験できないような環境に放り込まれたのだから、彼らに課せられたタスクは相当困難なものだ。
ドライビングだけでなく、全てのレベルを上げる必要が。
TMRで彼らの指導にあたるヨウニ・アンプヤは次のように語る。
「大輝と貴元が去年初めてこっちに来た時は、今、考えてもかなり低いレベルだった。まず左ハンドルのクルマに慣れることから始まり、貴元に関しては英語もあまり話せなかったからね。ラリー以前の段階からのスタートだった。フィジカルの能力も足りていなかったから、ドライビングだけでなくすべての面でレベルを引き上げる必要があった。しかし、彼らは一生懸命努力し、着実に成長している。経験が少ないからミスも多いが、フィンランドの選手と対等に戦えるようにもなってきた。世界のトップと比べられるようなレベルにはまだ至っていないが、成長のスピードはかなり速いと言えるだろう」