リオ五輪PRESSBACK NUMBER
日本競歩、初入賞は悔しさと共に。
松永大介が4年後のメダルを宣言。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byJMPA
posted2016/08/13 14:00
競歩史上初めての入賞者となった松永大介だが「メダルを目指していた」と悔しさが勝っていたようだ。「次」に期待したい。
気持ちが前に行き過ぎてオーバーペースに。
レースでは日本勢の中で終始一番前を歩いた。ただ、3kmで先頭に立ってしまったことについては後悔しているという。
「この舞台が楽しくてテンションが上がり、気持ちが前に行きすぎました。日本で応援してくれている人たちの顔がどんどん脳裏に浮かんできました。でも……」
序盤に前に出たことで要らぬ消耗をしてしまっていた。それがラストスパートを出せなかったことにつながった。やはり、まだ21歳。シニアの国際経験の不足による“ミス”だった。
今村文男・競歩部長も「10km以降にスピードが上がるのは想定される展開通りだったが、後半にペースアップしたところで対応力がなかった。序盤はトップと15秒くらいまで離れるまではペースを上げる必要はないし、しかも、本命視されていたロペス(スペイン)らも集団に控えていたのに、ペースを上げた。勝負を急ぎすぎた」と指摘する。
今村部長はレース途中、「冷静に行け」と松永に指示を出したが、若さゆえ、ペースを制御できなかったのだ。
世界ランク1位の高橋、同2位の藤沢も駆け引きに屈す。
3人の中ではもっとも経験のある藤沢は、「暑さを想定してスタミナ重視の練習を組んできたのが裏目に出た。スピードアップを甘く見ていて、13から14kmのところで(1km)4分くらいから3分55秒になったとき、かなりきつく感じた」と、リオ対策がはまらなかったことを悔やんだ。
そして、世界ランク1位の高橋は、その重圧にも苦しめられた。「うまく身体を動かせずに終わった。最初から流れに乗れなかった。自分の歩きを出せなかった。実力不足です」と悲しげに肩を落とした。
レースでは17kmから後続を引き離した王鎮、蔡沢林の中国コンビのレース巧者ぶりが際立った。前半を楽に入り、後半にペースを上げ、スピード争いになる終盤に一気に勝負に出た。圧巻のレースメイクだった。
この展開から見えてくるのは、駆け引きを含めた対応力、総合力が日本には不足していた点だ。今村部長は「スピードと強さには違いがある。2020東京五輪では、湿度対策も必要になるので、湿度への対応力も、求められる選手の資質となっていく」と言う。