ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
アディダスに続きナイキまで……。
超大手がゴルフ市場を去る理由。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2016/08/14 08:00
タイガー・ウッズは、ナイキにとってマイケル・ジョーダンに続く象徴的なスーパースターだった。
ウッズの不振よりも根本的な、ゴルフ市場の魅力減。
'08年の全米オープンを最後にメジャータイトルから見放されているウッズの存在を、ナイキ社の不振の要因を紐づける仮説も多い。
ウッズは不倫スキャンダルを乗り越えて'12年、'13年の2シーズンで通算8勝を挙げたが、以降は膝や腰の故障により戦列を離れるようになった。腰の手術に踏み切った後の'15-'16年シーズンはついに1試合も出場できなかった。
ただ、ウッズの凋落だけを撤退の根拠とするのはいささか安易でもある。それは同社の“ライバル”ともいえる存在の行動が暗示している。
ナイキに先駆けること3カ月、ドイツのスポーツ用品大手アディダスは1997年に買収した、ゴルフクラブなどを手掛けるテーラーメイドなどの3ブランドを売却する方針を固めた。依然として交渉は水面下で進められている。アディダスも、独自にアパレル部門は継続する方針を示した。
「彼はナイキゴルフにとって忠実なアンバサダー」
米・独の巨大スポーツブランドはクラブ・ボールの市場競争に“敗れて”、事業の見直しを迫られたわけだが、ゴルフは欧米でも競技人口が減少傾向にあり、マーケットが小さくなるという予測を厳しく見据えたからでもある。
オリンピックでも、2社は多くのスポーツ部門で激しくシェア争いを展開しているという。そんな世界的用品メーカーのシビアな判断を受けて、ゴルフ市場が再び、他のスポーツとは別軸で最適化が進むような“ガラパゴス化”を懸念する声もある。
ウッズの代理人であるマーク・スタインバーグ氏はナイキ社の撤退発表当時、米メディアの電話取材に対し、他メーカーとの接触は否定しつつ「タイガーと私は今後どうすべきか何度か話し合っている。状況に応じてしっかりとした計画を練らなければならない。いつになるか分からないが、別のクラブをバッグに入れることになる」と語った。そして「彼はナイキゴルフにとって忠実なアンバサダーであり、最も長く付き合いのある選手。それはずっと変わりはない」とも。