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ハミルトンとロズベルグが再び激突。
死亡事故から2年で、既に安全軽視!?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2016/07/31 07:00
ハンガリーGPでの表彰台に立つロズベルグとハミルトン。チームメイト同士でチャンピオン争いをするのは良いが、事故だけは起こさないで欲しいもの。
ロズベルグの解釈に真っ向から対抗したハミルトン。
「僕はあのコーナーで時速20km落としている。時速20kmも違えば、F1マシンでは別世界。しかも、通常のブレーキングポイントの30メートル前でアクセルを戻している」(ロズベルグ)
しかし、ロズベルグより先にダブルイエロー区間に行き当たり、タイムアタックを中止したハミルトンは納得いかない。それは、単にポールポジションを奪われたからだけでなく、モータースポーツの基本が歪められていることへの嫌悪である。
「レースを始めて23年間、イエローフラッグ(1本)ならスローダウンし、ダブルイエローならいつでも停止できるスピードに落とすって、ずっとやってきた。でも、予選後の走行データを見たら、ニコはあのコーナーを僕の前の計測ラップと同じスピードで走っていた。もし、今回のことが許されるのなら、今後はダブルイエローが振られても、その区間だけ0.1秒落とせばいいってことになるかもしれない。それは最も危険なシナリオにつながりかねない」
「停止できる速度」というのは時速何kmなのか?
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なぜ、このように意見が分かれているのかというと、ダブルイエローでの減速が「停止できる速度」としか明記されていないためだ。
これが練習走行中であれば、ドライバーたちは安全性を優先して大きく減速に努めるのだろうが、予選アタック中やレース中となれば、不利を被らない限界ギリギリの減速にとどめようとする。それがレーシングドライバーの本能である。
だからこそ、その本能を、FIAは理性で抑制する義務がある。
2年前の日本GPでダブルイエロー中にコースアウトし、作業車に衝突して意識不明の重体に陥り、昨年亡くなったジュール・ビアンキ。
FIAはその後、作業車がコースに出動している場合はバーチャル・セーフティカー(VSC)を出し、全区間で強制的に大幅な減速を強いるシステムをスタートさせた。