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小平智が全英で「一層、海外に」。
スポーツに“内向きな若者”は無縁!?
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2016/07/30 08:00
世界の舞台ではデイ、マキロイら同世代に加え、年下のスピースが活躍している。小平智26歳、いまが勝負の時なのだ。
米ツアーの日本人減少には、予選制度変更が。
中堅に向かう世代の彼らの目に、米ツアーよりも欧州ツアーが魅力的に映るのは「挑戦がしやすい」という点もある。米ツアーは2013年の改革により、年度末のQTは松山英樹らが戦うPGAツアーに直接的に通じる門ではなく、下部ツアーの出場権を争うシステムになった。つまりQTを上位で突破しても、1年は“ニ軍ツアー”でのプレーになる。そこで好成績を残して這い上がるしかない。10数年前に比べて、単年でも米国でプレーする日本人選手が減少したのはこの制度変更の影響もある。
一方で欧州のQTは現在もトップツアーにつながっており、出場権を得られればすぐに一流選手と競い合うチャンスがある。20代も後半に差し掛かる選手が「自分には時間がない」と焦り始める心情も分からなくはない。
この欧州ツアーのQTに昨年、実際に挑戦したのが27歳の片岡大育だった。かねてアジアンツアーで腕を磨いてきたが、昨年5月に日本で初勝利を挙げるや否や、すぐに欧州の扉を叩いた。スペイン・バルセロナ郊外のコースで行われた6日間に及ぶ最終予選会は残念ながら予選落ちしたが、ことしもチャンスをうかがっている。小平同様、まずは日本ツアーで好成績を残すことで、最終予選会出場の資格を得たいところだ。
「内向き志向」はスポーツ界とは無縁?
欧州には、特有の難しさがある。アジアでの活躍を元手に欧州ツアーの試合に多く出向く川村昌弘に言わせれば「移動や環境の変化が、苦になる人は無理」。食事が口に合わない、飛行機が遅れる、キャディバッグが手元に届かない……毎週違う国でプレーをするため、トラブルの数が日本や米国の比ではない。
「スイスの試合は毎年空港から電車に2時間半乗っていきます。景色がいいから」(川村)なんてケロリとして言うくらいのタフさが求められる。同時にそのタフさは、異国に身を置き続けて、養われたものでもある。ちなみに川村が「僕と同じマインド」と評す市原弘大はいま、日本ツアーと掛け持つアジアンツアーで来季のシード権獲得が見えており、欧州への道が開く可能性がある。国内で目立った実績がないにもかかわらず、今年の全英で予選を通過したのだが、これはこじつけ過ぎだろうか。
最近の新聞には「内向き志向」の字が躍る。米大統領選を戦うドナルド・トランプが共和党候補に選出されただけでなく、英国が国民投票でEU離脱を決めた。移民というフレーズに嫌悪感を示す政治家や政党が発言力を強めているのは、米英だけではないという。
ただ、いまのところスポーツの世界、欧州のプロゴルフ界では外への広がりを見せている。欧州ツアーはアジアンツアーを飲み込まんばかりに連携を強化しているところ。そもそも優秀な人材であれば、どんな社会でも排他的な志向に打ち勝つ力を秘めている。勇敢な意思はいまも、大いに歓迎されているはずなのだ。
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