ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
小平智が全英で「一層、海外に」。
スポーツに“内向きな若者”は無縁!?
posted2016/07/30 08:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
AFLO
画面の向こうを眺めるうちに、胸にはぽっかりと穴が開いた。
7月の全英オープンで予選落ちを喫した小平智は、その週末、スコットランドで借りた宿舎に籠ったままだった。歴史あるグラスゴーの街並みを散策するでもなく、ただただ「ボーっとしていた。ぜんぜん外に出る気になれなかった」。
テレビではヘンリック・ステンソンとフィル・ミケルソンがメジャー史に残る競り合いを見せていたが、デッドヒートを展開した2人のみならず、決勝ラウンドをプレーする他選手たちのことすら、彼には別次元に思えた。
「おれも、ここに出てたのか……」
昨年日本オープンを制した小平にとって、今年の全英は「満を持して」挑んだメジャーだった。メジャー初出場となった2013年大会は、2日間で19オーバーを叩いても「何もかも足りない。技術がない」で片づけられた。当時はその場を踏んだことが収穫だった。
今回は成績を出したいと思って渡英した。
ただ今回は違う。決勝ラウンドへの夢は、またも無惨に散った。初日12番まではイーブンと善戦していたが、13番からの4ホールで5ストローク後退。小さなミスからスコアは雪だるま式に大きくなった。誰よりも本人が「場にのまれた」と振り返ったのだ。
「経験というよりも、ただ悔しい。今回は成績を出したいと思っていた。意気込み過ぎた。言い訳のつもりはないんですけど……。ことしはメジャーにこの1回しか出られなくて、アメリカの試合に出たわけでもなく緊張感もあった。まあやっぱり、それもただの言い訳ですよね」
帰国したあとも、威勢の良さは微塵もない。同じ予選敗退でも、痛感した未熟さは3年前とはまた別次元で、格段の差があった。
嘆くだけならそこまでの選手だが、小平は現実に打ちひしがれながらも敗因を自分なりに分析した。海風にさらされながら改めて感じたのは、外国での経験不足。数少ない海外遠征でのチャンスに興奮気味だった自分は、なんだか周囲から“浮いていた”のではないか。