野球場に散らばった余談としてBACK NUMBER
苦戦が続いても、若虎強化は辛抱強く。
金本阪神、“超変革”のロマンを追う。
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/06/30 07:00
積極的な若手起用が特徴の金本阪神。プロ6年目の中谷は、監督の期待に応えることができるか?
結果を出せなくても、1試合では判断しない。
◆辛抱強く接する
〈24日広島戦は「7番左翼」で先発。1点を追う2回2死一塁で左腕ジョンソンから左中間突破の適時二塁打。7、9回も安打を連ねてプロ初の猛打賞だった〉
実は、この直前の20日オリックス戦で精彩を欠いていた。「6番左翼」で先発して4回1死満塁の先制機で空振り三振。6回も再び2死二、三塁の先制チャンスで追い込まれ、外角直球にハーフスイングの空振り三振。中途半端な打撃で、8回は代打を送られた。
汚名返上の機会を与えると大当たり。金本監督は「1試合よくて1試合悪かっただけで、チャンスをあげないとなるとね。育っていかないし、なかなか」と話す。若手が活躍しても、勢いを生かせるはずの翌日に、相手先発への相性などが優先されてスタメンを外れるケースが近年何度もあった。この日は左腕相手。同じ右打者の俊介、狩野もいるなかで起用し、奮起させた。
◆志を高く持て
〈25日広島戦は「7番左翼」で先発。4点を追う7回無死一塁で左翼にプロ初本塁打をマークした〉
敗色濃厚の展開で、一矢報いた。金本監督は冷静に「調子いいんだろうけど、これを長く続けないと。いずれ調子は落ちてくると思うけど、その時になぜ悪いのか、しっかり自分で把握して。すぐ調子を戻せるようにすることがレギュラーへの道だから」と話す。
広島戦では連日、試合前、中谷に技術指導。インパクトからフォロースルーに移る際に腰が浮く悪癖を指摘していた。一軍経験は浅いが公平な目線で教える。一軍に定着していない中谷に「レギュラーへの道」を説き、高い意識を植えつけた。
猛虎復活のためには若手の強化しか道はない。
チームは順風満帆ではない。開幕当初に奮闘した高山ら若手が息切れし、肝心の主力もエンジンが掛からない。交流戦を7勝11敗で負け越し、苦戦を強いられているが、信念にブレはない。
6月18日には、坂井信也オーナーや四藤慶一郎球団社長らとトップ会談に臨んだ。補強の必要性も話題に上ったが、指揮官は若手の強化を強調したという。球団首脳は「むしろ、我々よりも我慢強い。監督は、僕もレギュラーまで4年かかった、長い目で見てやらないといけないという話をしたようです」と言う。自身も'91年ドラフト4位で広島に入り、不動の定位置をつかむまで4年かかった。自らの歩みは、そのまま辛抱強い用兵になっている。