オリンピックへの道BACK NUMBER
ケンブリッジ飛鳥か山縣か桐生か……。
日本選手権の続きで9秒台を夢見る。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYusuke Nakanishi/AFLO SPORT
posted2016/06/27 17:30
ゴールを切る寸前……グイッと上半身を押し出し見事優勝したケンブリッジ。100m走のライバル争いはますます熾烈に。
実は……レース中にアクシデントがあった桐生。
何が、明暗を分けたか。まず桐生について触れれば、本人は言葉を濁したが、アクシデントがあった。
指導する土江寛裕コーチが明かしたところによると、レース序盤に右足が痙攣を起こしていた。それが不完全な走りに終わった最大の理由だ。
もう1つあげるなら、桐生、山縣と、ケンブリッジの立ち位置の違いだ。
桐生と山縣は、9秒台への期待を集め続け、大会のたびに、あるいは大会以外でも注目を集め続けた。自らも、9秒台への意欲を口にしていたし、周囲と自身も期待できるだけの走りを見せてきた。
今回の日本選手権は、2万をゆうに超える観客が押し寄せたように、まさに9秒台を披露する格好の舞台だった。シーズンここまで集めてきた注目はピークに達した。重圧もあっただろう。
山縣はこうも語っている。
「スタートから60mまでは手応えも感じられました」
裏返せば、終盤に課題を残した。今シーズンの好調時の走りと比べれば、どこか力みがあったのは否めない。
ケンブリッジは2人を追う立場で、緊張も少なく。
翻って、ケンブリッジは、2人を追う立場にあった。
5月に行なわれた東日本実業団選手権で10秒10の自己ベストをマークしたことで今大会、注目選手の1人となったが、桐生、山縣とは異なる。
山縣に対し、中盤から終盤にかけて、ぐんぐんストライドを伸ばし加速していくさまに、緊張はうかがえなかった。
ほんのささいなところで、紙一重の勝負は分かれた。
100mは終わり、桐生に加え、ケンブリッジが五輪代表に内定した。理事会を待たなければいけないが、山縣が代表に選ばれるのも間違いないところだろう。
そして3人それぞれに、楽しみを残したレースでもあった。