“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-16代表を鍛える“森山イズム”。
世界で戦うための育成法とは?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/06/21 17:30
インターナショナルドリームカップに臨むU-16日本代表。後列の右から2番目が中村敬斗、前列1番右が久保建英。
「どんなコンディションでも戦える選手でないと」
世界の舞台をかけたAFC U-16選手権の開催地は、U-17W杯と同じインド。森山監督は自分が求める選手像についてこう語っている。
「インドは、アジアの中でもピッチコンディションや気候、それ以外の要素でもかなり過酷な環境になる。だからこそ、どんなコンディションでも自分を出して90分間戦える選手でないと、このチームでは生き残れない。技術ももちろん大事だが、フィジカルや戦う意識が伴ってなければ意味が無い」
近年、日本サッカーを取り巻く環境は激変し、特に育成年代では海外やプロのサッカー情報が溢れ、サッカーに対する知識のインプットはしやすくなった。
だが、ことアウトプットの面では、どうか。
技術論や戦術論ばかりが先行し、肝心の個々の能力、1対1やフィジカルコンタクト、敵と戦う、戦い切る、闘争心を持ち続ける――という、根本的な部分がおろそかになっていないか。
人工芝のピッチが普及したことの弊害。
森山監督を始め、複数の指導者が懸念しているのが、人工芝ピッチの一般化だ。
Jユースはもちろん、高校サッカーでも多くのチームが人工芝ピッチを有し、練習や公式戦をそこで行っている。人工芝ピッチではキックやトラップ面で“ごまかし”が通用する。
例えばキックするにしても、しっかりボールを捉えなくても真っ直ぐボールが走るし、イレギュラーしない分、トラップもしやすい。
「綺麗に整えられたピッチでばかりプレーをしていると、いざでこぼこのピッチやぬかるんだピッチになった途端に、まともにプレーできなくなる選手が続出する。それではアジアを勝ち抜けないし、世界でも戦えない」
森山監督は、そう言ってずっと警鐘を鳴らし続けていた。