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NBAファイナルを接戦にした超人の力。
カリー、レブロンよりもアービング!
posted2016/06/16 17:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
ついに「超人」が覚醒した。
しかも、ふたり揃って――。
NBAファイナルの第5戦、1勝3敗と崖っぷちに追い込まれたキャバリアーズの超人、レブロン・ジェームズとカイリー・アービングがそろって41点を取る大活躍を見せ、「サバイバル」した。
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前回のコラムで、私は第2戦までのウォリアーズの圧勝劇は、オフェンスの「民主化」の賜物であり、それを止めるのは難しいだろう――と書いた。実際、ウォリアーズは敵地クリーブランドでの第4戦をモノにして、王手をかけた。勝負は第5戦で決まるかと思われた。
キャバリアーズに反撃のチャンスがあるとするなら、「レブロンとアービングの超人的な活躍に活路を求めるしかなさそうだ」と予測していたが、まさかそのふたりが敵地でヒロイックな活躍をするとは想像していなかった。
NBAの超人は、凡人の予測をたやすく超えていく。
NBAは、超人の世界である。かつて田臥勇太選手(リンク栃木)に取材した時、「レブロンは、あの体格でポイントガードの能力を持ってますからね。大変な時代になりました」と話していた。
レブロンの鍛え上げられた肉体によるパワープレー、コート・ヴィジョン、そしてシュートの正確性。それが瀬戸際に追い込まれた第5戦で爆発したのだ。
全くシュートを落とす気配がなかったアービング。
それよりも驚かされたのは、カイリー・アービングだ。
もしもこの時点でMVPを決めるとするなら、私は間違いなくアービングを選ぶ。第3戦は30点、第4戦も34点、そして第5戦は41点。特に敗れた第4戦では、キャバリアーズは終盤、アービングの1on1でしか得点が取れなくなっていた。
レブロンは苛立ち、チームの核としての風格がなく、キャバリアーズはアービングのチームに見えた。
アービングの第5戦のパフォーマンスは「一世一代」に近く、シュートを打てば落としそうな気配はまったくなかった。お手上げである。