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パワーユニットの信頼性大幅向上!
F1で連続入賞、ホンダの逆襲開始。
posted2016/06/05 10:30
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
ホンダが好調である。
5月29日に行われたモナコGPでは2台そろって入賞。これでロシアGPから3戦連続での入賞を果たした。ホンダがマクラーレンと組んで復帰した2015年以来、初めてのことである。
6戦目のモナコGPを終え、獲得したコンストラクターズポイント24点は、昨年1年間で得た27点に迫る。
この勢いの源になっているのが、改良したホンダのパワーユニットにあることは間違いない。ホンダは、いかにしてライバルたちとのギャップを埋めることに成功したのか。
昨年からもっとも大きく向上したのは、信頼性である。
現在のF1は、1年で使用できるパワーユニットの基数がレギュレーションで決まっている。昨年、1年目のホンダに許されていた基数は5だったが、結果的に11基ものパワーユニットを使用してしまった。現場監督的な役目を担っているチーフエンジニアの中村聡は、信頼性に苦しんだ昨年を次のように述懐する。
「ドライバーやチームには申し訳なかったですが、昨年はすべての面で時間に追われていました。何か新しい部品を投入するときには事前に耐久性をチェックするというのが基本ですが、そこまでの余裕がなかった。さらに次から次へと問題を解決しなければならないために、パワーユニットが継ぎ接ぎだらけになってしまい、メンテナンス面にも問題がありました。例えば、昨年のパワーユニットはMGU-Hとターボを外すのに10時間ぐらいかかっていたので、その部分に問題が出た場合は、ICE(エンジン本体)に問題がなくても、パワーユニットごと交換しなければならないこともありました。それが今年は3分の1ぐらいで交換できるようになるまで、レイアウトが整理されました」
マシントラブルが激減し、パワー不足も改善。
モナコGPを終えた時点で、今シーズンもっとも多くのパワーユニットを使用しているのは、じつはメルセデスとルノー(レッドブル)。ホンダは開幕戦でアロンソが大クラッシュして全損した以外、ハード面でトラブルを起こしたのは、バーレーンGPでバトンがリタイアしたときのみ。モナコGPで、バトンは4レース連続で走りきったことになる。これはホンダにとって、復帰後初めてのことだった。
昨年のホンダは、パワー不足にも苦しんだ。特にブレーキとターボによって回生される電気エネルギー(デプロイ)不足が深刻だった。日本GPでは、アロンソが「GP2エンジン」と嘆いたほどである。それが今年は大きく改善。モナコではコース特性も関係しているものの、あのメルセデスAMGのロズベルグをアロンソが抑えきった。