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パワーユニットの信頼性大幅向上!
F1で連続入賞、ホンダの逆襲開始。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2016/06/05 10:30
モナコGP決勝は雨。難しいコンディションのレースで2台揃って入賞したホンダの手応えはいかほどか。
制御系のソフトウェアをレースごとに改良。
「昨年、デプロイが十分に行えなかった理由は、ターボが弱かったからです。今年はその部分を大幅に変えて、MGU-Hを機能させています」(中村)
しかし、ホンダがパワーアップしたのは、デプロイが向上したことだけが理由ではない。
じつは、ホンダは毎戦のように、制御系のソフトウェアをアップデートしている。それは、今年のパワーユニットが昨年よりもデプロイが改善されている分、昨年と違う使い方ができるようになり、それにあわせて新しいエネルギーマネージメントや、その変更に適応するよう制御系のデータも変えなければならないからだ。信頼性の確保とデプロイの向上に目処がついたからこそ、踏み入れることができた新しいチャレンジだった。
コンマ3秒の圧縮が大きなアドバンテージに。
このチャレンジのひとつに、予選モードの使い方がある。F1のパワーユニットというのは、いつも同じような使われ方をしているわけではない。予選での一発のタイムを出すときやレースでオーバーテイクしたいときなどは、フルパワーで走ることができるモードにドライバーがステアリング上のスイッチを切り替えている。だが、信頼性の観点から昨年までのホンダは、この予選モードをレースでは限られた時間しか使用することができなかった。
今年から新しくホンダのF1プロジェクト総責任者となった長谷川祐介は、この部分に着目した。
「それをやっても劇的にパフォーマンスが向上するわけではありません。でも、それによって1周でコンマ3秒速くなるのであれば、10周で3秒、50周で15秒稼げるわけですから、大きい」
第4戦ロシアGPでは、レース前に長谷川総責任者はエンジニアたちを集め、「レースでもできるだけ長く予選モードを使ってみてはどうか」と議論。試してみる価値はあるというエンジニアたちからの同意を得て、レースでも予選モードをできるだけ長く使用させる決断を下し、パワーがものをいうサーキットで、見事2台そろって入賞を果たした。