ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
熊本出身ゴルファーが活躍中!
今だからこそ支援のあり方を考える。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byKyodo News
posted2016/05/08 08:00
東建ホームメイトカップ決勝1日目となる4月16日、チャリティサイン会で募金を呼びかける永野竜太郎(右)と重永亜斗夢(左)。
米ゴルフ界のチャリティに学ぶべき点。
日米のチャリティ精神の違いはゴルフに限ったことではないし、チャリティ大国アメリカの根底には、一国内での大きな経済格差の問題、それに伴う税制優遇制度が潜んでいるようにも思う。ゴルフ愛好者には富裕層も多く、資金集めにはうってつけのプロスポーツ。それゆえプロの試合も華やかで、大規模であればあるほど、その裏に潜む影をどうしても邪推させられることもある。なんにせよ、額の桁の違いだけで優劣を判断するのはナンセンスなのだろう。
だが、学ぶべき点もあるはずだ。
「支援を受ける立場」の比ではないが、「支援をする側」にも思い悩むところはあるらしい。
仙台市出身で5年前には被災者のひとりになった岩田寛らは言う。
「チャリティが必要とされているところに、ちゃんと分配されているのか分からない。だから本当は、直接(支援を)やることが大事だと思うんですけど……」
大会そのものが“信頼できるチャリティ先”。
せっかく集めたお金や物資が、その都度、適所に適量が分配されているか。地域や時期によって供給格差も多いと聞くから、その役目を“人任せ”にせざるを得ない過程がもどかしい。寄付先の選定に随分と時間がかかるケースも少なくない。
その問題からいえば米ツアーではこんな例がある。ルイジアナ州ニューオーリンズでは毎年チューリッヒクラシックという試合が開催されている。2005年のハリケーン・カトリーナで甚大な被害を受けた当時、フィル・ミケルソンらは義援金の一部を、大会を支援する地元のチャリティ団体に寄付した。その団体は被災支援のために立ち上がったわけではなく、かねてから密接な関係を持って地域活動に支援を役立てていた。
選手にとっては大会そのものが“信頼できるチャリティ先”なのである。裏を返せば、こういった関係があるがゆえに大企業が冠スポンサーから撤退しても、開催地は既存の大会を消滅させない努力をする。そんな望ましいシステムの循環がある。