詳説日本野球研究BACK NUMBER
超高校級が少ない今年の選抜がなぜ。
「接戦と全力プレー」で観客6万人増?
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/04/04 12:00
春夏通じて初優勝の智弁学園。日々の練習から「日本一」を掲げてきた努力が実を結んだ。
サヨナラ6試合は過去最多、1点差試合も多かった。
サヨナラ勝ち6試合は過去最多に並び、1点差試合は準々決勝以降の7試合中4試合もあった。準決勝の智弁学園対龍谷大平安は0-1とリードされた智弁学園が9回裏、1死満塁の場面で1番納大地(3年)がセンター前ヒットを放ち、2者を迎え入れてのサヨナラ勝ち。
同じく準決勝の高松商対秀岳館は延長11回表、3-2と1点リードした高松商が2死一塁の場面で5番美濃がレフトの頭を越える二塁打を放ち一塁走者を迎え入れてダメ押し。
決勝の智弁学園対高松商は1-1の同点で迎えた11回裏、智弁学園が2死一塁の場面で6番村上頌樹(3年)がセンターの頭を越える二塁打を放ち、一塁走者を迎え入れてサヨナラ勝ちと、一、二塁走者が長駆ホームインする場面が非常に多かった。こういう高校野球を見たかったと改めて思った。
今大会の最速は創志学園の高田。
投手では大会前に名前が挙がっていた鈴木昭汰(常総学院3年)、高橋昂也(花咲徳栄3年)、高山優希(大阪桐蔭3年)、高田萌生(創志学園3年)に前出の藤嶋(東邦3年)、山崎(敦賀気比3年)が軒並み1、2回戦で姿を消し、準々決勝以降に注目を集めたのは早川隆久(木更津総合3年)、市岡奏馬(龍谷大平安3年)、吉高壮(明石商3年)、村上(智弁学園)、浦(高松商)たちだった。
早川、村上はストレートのキレと低めのコントロール、さらにストレートと同じ腕の振りで変化球を投げ分けるというテクニックで打者を翻弄し、投手優位に持ち込んだ。とくに村上は90km台のカーブでもストレートと同じように強い腕の振りで投げ込み、打者にタイミングを合わせることを許さなかった。
ストレートの魅力を再認識させてくれたのは、創志学園の高田だ。
昨年秋の明治神宮大会では左肩が早く開く悪癖で初戦敗退を余儀なくされたが、今選抜は早い開きを矯正し、左側面を打者にぶつけていくような投球フォームで1回戦を勝ち抜いた。2回戦の高松商戦ではストレートの最速が今大会出場選手中ナンバーワンの149kmを計測し、コントロールも安定していたが、3回に微妙なコースをボールと判定されてから制球を乱し、大量5点を失い勝機を逸した。低め変化球の精度を高めることが、この剛腕の夏までの課題である。