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川口能活、相模原で「もうひと花」。
サッカーの全てを楽しむために。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byTsutomu Takasu

posted2016/02/09 10:40

川口能活、相模原で「もうひと花」。サッカーの全てを楽しむために。<Number Web> photograph by Tsutomu Takasu

日本代表116キャップはGKとしては史上最多。その佇まいには、彼が重ねたキャリアと実績が確かに刻まれている。

現役引退という選択肢はなかった。

 現役引退という選択肢もあったのか?

 そう問うと、川口はゆっくりと首を振った。

「(現役生活が)残り少なくなってきているのは分かっています。続けられるならできるだけ続けたいけど、でもそのなかで、サッカーを楽しんで終わりたい。悲壮感漂ってやめるより、楽しんで笑いながら……。好きで始めたサッカーを、しんどいなって思ってやめたくはないですから」

 笑って、楽しんで。

 努力もせず、精進もせず、ただ単に楽しむということではない。サッカーに打ち込むストイックな姿勢も、勝利を追求していく姿勢も変わらない。ただ、それらすべてを苦しみとせず、楽しむという発想に変えていくということ。

コーチは年下、他の選手とは20歳近く違う。

 相模原の薩川了洋監督も、清水商の先輩だ。代表や監督とコミュニケーションを取ることが自然と多くなっている。また、他のコーチングスタッフは川口より年下だという。意見を求められることも多く、今まで以上にチーム全体のことを考えるようになっている。

「いろんな人と話をして、チームのことを客観的に見るようにもしています。年齢に合ったサッカーの楽しみ方ってあるんじゃないかって思いますね。選手も僕と20歳近く離れていて、お父さんたちのほうが年齢は近いぐらい。

 磐田や岐阜でも言える範囲でアドバイスは送ってきたつもりですけど、ここではもっとそういうのができればいい。今、一緒にトレーニングしてみんなの癖とか性格とかも分かってきたんで、まあこれからですけど」

 チーム内での役割のみならず、SC相模原の知名度を上げていくためにクラブが企画するトークショーなどイベントにも積極的に参加している。

 客観的にチームを眺める、クラブ全体にフォーカスを当てていく。これも川口の言う「楽しむ」につながっているような気がしてならない。

【次ページ】 「多分、ここが最後のクラブになるのかなって思う」

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