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U-23、忍耐の90分と躍動の延長戦。
8強の壁を打ち破った「割り切る力」。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2016/01/23 18:00

U-23、忍耐の90分と躍動の延長戦。8強の壁を打ち破った「割り切る力」。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

88分から途中出場したファジアーノ岡山のMF豊川雄太は、96分に試合を打開するゴールを決めた。

延長突入、攻撃のスイッチを入れた交代。

 この試合3度目のキックオフ──延長前半が動き出すと、ようやくイランの足が止まってきた。82分に久保裕也を下げて浅野拓磨を、88分に矢島慎也に代えて豊川雄太が投入されていたことも、日本の選手たちが攻撃のスイッチを入れることにつながっている。

 相手の交代にリアクションしたベンチワークではなく、手倉森監督が先に仕掛けたのだ。交代の意味を選手が感じ取らないはずはない。ターンオーバーを敷いたグループステージの選手起用によって、指揮官と選手全体の相互理解はさらに深まっている。

 スタミナは枯渇していない。試合前から抱いていた「相手より動ける」という自信が、選手たちを奮い立たせる。

 延長前半の96分、ふたつの駆け引きが結びつく。

 イランのゴールを、ついにこじ開けた。

「いいボールをあげれば絶対にそこへ入ってくる」

 敵陣でパスを受けた右サイドバックの室屋成が、タテではなく内側へ切り替えす。

「相手のサイドバックは毎回タテを警戒して、身体の重心が後ろへ下がっていた。左足へ持ち替えたらスペースがあるし、チャンスになるかなと思っていた」

 ゴール前の状況は、はっきりとは視認できなかったという。ただ、「豊川がいるのは分かっていて、いいボールをあげれば絶対にそこへ入ってくる」との思いがあった。

 173センチの豊川は、イランのDFに高さで挑むのは得策でないと自覚している。「普通に競り合っても勝てないので、ふたりのセンターバックの間へ、クロスが上がってくる瞬間に飛び込む」とのイメージが、室屋のクロスにシンクロする。まったくのフリーになった背番号14は、ヘディングシュートを突き刺す。GKにセーブするチャンスを与えない先制弾だった。

 延長前半の終了間際には、ゴールに匹敵するビッグプレーが日本を救う。

 ゴール前のこぼれ球がモタハリにこぼれ、至近距離からシュートを浴びる。これをGK櫛引が左足で弾き出したのだ。「あの時間帯に試合の流れをイランに渡さなかったことが、延長後半の戦いにつながったと思う」と背番号1が振り返ったように、延長後半の109分と110分、中島翔哉がファインゴールを連続で叩き込んだ。90分までは我慢比べで、延長前半はスリリングな逃走劇となったイランとのサバイバルマッチは、最終的に3対0の快勝で幕を閉じたのである。

【次ページ】 「チーム全員で」を体現する手倉森監督の采配。

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