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「育成の巨人」は復活するのか?
三軍の設立、そして独立Lの重視。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byHideki Sugiyama

posted2016/01/12 10:40

「育成の巨人」は復活するのか?三軍の設立、そして独立Lの重視。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

山口鉄也は育成出身選手最高の成功例と言える。彼に続く選手は現れるのだろうか。

巨人失速の陰で育成が加速したソフトバンク。

 育成出身者の輩出スピードが鈍ったのは'10年以降だ。オリックスに移籍した山本和作が'13年に一軍で96試合出場を果たしているが、抜擢したのは巨人ではない。それに対してソフトバンクは育成出身をコンスタントに戦力にしている。山田は'11、'12年にそれぞれ7勝、8勝を挙げ通算22勝、二保は3年半の育成期間、さらに2年半の一軍での助走期間を経たのち、昨年44試合に登板して6勝1敗の好成績を挙げている。

 二保の育成ドラフト同期26人のうち、現在も球界に残っているのは同じソフトバンクの猪本健太郎とロッテの西野勇士、岡田幸文の3人だけである。育成出身でありながら戦力になるまで6年間の猶予期間を与えられている――。

 二保の素材の魅力と同時に、モノになるまで待てるソフトバンクの長期計画なしではこの覚醒は実現しなかった。“補強ありき”の金満球団と陰口を叩かれながら、一方では未完の大器の素質開花を待つ辛抱強さがある。日本シリーズ2連覇の強さはこのへんに隠されている。

ソフトバンクが建設した豪華ファーム施設。

 育成ドラフトを経て戦力になったソフトバンクの選手をもう一度おさらいする。

◇投手……山田大樹、二保旭、千賀滉大

 野手は小斉祐輔(楽天移籍後に退団)が通算66安打、亀澤恭平は中日に移籍した昨年、それまでの支配下登録ゼロからいきなり一軍で89安打を放っているので「戦力になっている」と認めていい。彼ら以外でも牧原大成(内、外野手)、拓也(捕手)、飯田優也(投手)が一軍での出場機会を増やし、牧原は'14年にウエスタンリーグ新記録となる120安打を放ち、打率.374というとんでもない記録を樹立しているので一軍で大化けする可能性は十分ある。

 ソフトバンクは今季から、二、三軍選手を育成する場所が筑後市に建設されたファーム施設に替わる。二軍スタジアムなどの諸施設は鹿児島本線・筑後船小屋駅から徒歩3分という絶好の場所にあり、球団のホームページには「約7万1000平米の広大な敷地に主に二軍公式戦を行うメインスタジアム、主に三軍が練習や試合などで使用するサブグラウンド、日本最大級の屋内練習場、選手寮・クラブハウスが来年には完成する予定です」とある。

【次ページ】 「育成の巨人」も復活傾向にある。

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