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想定外尽くしの1年だったヤクルト。
トリプルスリー、セ界制覇は続くのか。
posted2015/12/25 10:50
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
Hideki Sugiyama
Number Web版“プロ野球・ゆく年くる年”企画は、全12球団の短期集中コラムシリーズです。年末年始にかけて、全12球団の2015年の振り返りと2016年の夢を、チームへの思い入れたっぷりの筆致でお伝えいたします!
第1回目はセ・リーグの覇者、東京ヤクルトスワローズです。
2015年、混セを制したのはスワローズだった。解説者による開幕前の順位予想では、前年最下位という結果を受けてか、ほとんどが4~6位のBクラス。まさに下馬評を覆す“想定外”のリーグ優勝だったと言って差し支えないだろう。
燕の躍進を支えたのは打撃陣。
川端慎吾(首位打者・最多安打)、山田哲人(本塁打王・盗塁王)、畠山和洋(打点王)の上位打線は打撃タイトルを総ナメにし、故障でほとんど出場機会のなかったミレッジとバレンティンの不在を感じさせない打棒を見せた。
各打者がここまでの数字を残すのは想定外かもしれないが、一定の活躍をしてくれるであろうことは前年の成績から予想できたことではあった。2014シーズン、ブレイクした山田を筆頭に3選手とも打率3割をキープするなど着実にステップアップ。その成長曲線の延長線上に2015年の飛躍があったと位置づけられる。
ここに、リーグ優勝決定打を放った雄平がコンスタントに数字を残せるようになり、さらにはバレンティンが順調に復帰するとなれば、リーグ1位の得点力を誇った攻撃力が2016年に厚みを増すことは間違いない。他チームの投手に恐れられる強力打線がスワローズの大きな武器となることに変わりはなさそうだ。
2014年の防御率が12球団ワーストからの出発。
一方で当初から不安視されていたのが投手力である。
最下位に沈んだ2014シーズンの防御率は、12球団で最も悪い4.62。石川雅規の10勝(10敗)がチーム唯一の2ケタ勝利で、殊に先発投手陣の頼りなさが下馬評の低さにつながっていた。
こうした事態を、編成部長の松井優典は「地盤沈下」と表現していたことがある。ピッチャー陣の崩壊を受けて臨んだ2014年のドラフト会議について語った時のことだ。
「地盤沈下を起こさないようなベースまで引き上げるというのが2014年のドラフト。指名した7人のうち5人が大学や社会人の即戦力と見られる投手だったのは、そういう方向性だったからだよ」