スポーツのお値段BACK NUMBER
投資先として魅力的であるために。
Jクラブと欧州トップは競争相手だ。
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byAFLO
posted2015/11/28 10:30
アトレティコ・マドリーは、中国資本を受け入れた初めての欧州メジャークラブとなった。
Jクラブは投資対象として魅力的なのか。
Jリーグに目を向けると、まず、外資規制が国外からの投資を阻んでいるという現実があります。クラブの株の51%を所有するには、日本国籍を有する個人または企業である必要があるのです(日本法人を設立すれば条件をクリアできる)。こうした規制のなか、2014年、マンチェスター・Cなどを傘下にもつシティフットボールグループ(CFG)が横浜F・マリノスに19.95%の出資を行いましたが、現段階ではあくまで限定的、例外的なケースでしょう。
そして規制の有る無し以前に、Jリーグのクラブは国外からの投資対象になりうるのかどうかを考えなければなりません。アジア戦略を打ち出しているJリーグは、成長性の高いアジア市場を牽引する存在になろうという志はあるものの、その具体的な成果が出てくるのはまだこれからというのが現実だと思います。
言い換えれば、現状ではグローバル展開を目指す企業がJリーグやそのクラブに投資したところで、アジア市場におけるプレゼンスの拡大に直結しないと判断している可能性が極めて高いのではないでしょうか。
海外クラブでは大企業経営経験者がトップに。
さらに、仮に投資を受けたとして、どれだけのJリーグのクラブがその資金を強化費だけでなく、事業構築に向けて有効に活用できるだけのノウハウを持ち合わせているかも疑問です。
スペインの主要なサッカークラブ経営者たちのプロフィールを調べてみたところ、大企業のCEO経験者が会長を務めるレアル・マドリーやバルセロナを筆頭に、経営のプロフェッショナルがトップを務めているクラブが多くありました。金融、ホスピタリティ、食品などの業界で15年もの経営経験がある中国系の女性(シンガポール国籍)が舵とりを行うバレンシアのようなケースもあります。
一方でJリーグクラブの経営者に、こうしたバリバリの経営のプロフェッショナルがどれだけいるでしょうか。プロスポーツチームの運営をひとつのビジネスとして明確に位置づけ、投資家たちが求めるリターンに応えられる経営陣を揃えられない限り、魅力的な投資先として認知されることはないはずです。