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Jのコンタクトプレーは少なくない!?
柏vs.東京で気になった「審判の笛」。
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byAFLO
posted2015/11/10 10:40
闘志を前面に出してプレーする橋本拳人のタックルには、客席から拍手が起きた。
つい疑問がでてしまう曖昧な判定基準。
その理由は、判定基準がよくわからないからだろう。この試合の決勝点は、15分に柏がFC東京に与えたPKによって生まれた。CKからボールを受けた橋本に対して、大津祐樹がシュートブロックに入る。その際に残した左足が、切り返した橋本の足に引っかかった。
これがPKを取られてもおかしくないプレーだったのは間違いない。ただし、接触自体はわずかに触れただけ。切り返しの時点で橋本の体勢も崩れていてドリブルも伸びたため、大津の足がかからなくても止められていた可能性が高い。この程度の接触がPKならば、42分にペナルティーエリア内で鈴木大輔が橋本の足を踏んで止めた場面ではFC東京に、66分に太田宏介がクリスティアーノのシャツを引っ張った場面では柏にPKが与えられるべきだが、この2つのシーンで笛は鳴らなかった。
これ以外にも、特に背中側からのチャージに対する判定基準は曖昧で、前半は軽い接触でも笛が吹かれることが多く、後半は流されるシーンが目に付き、プレーが止まるたびに両チームの監督が主審に対して怒りのジェスチャーを示した。スタンドから見ている側としては、選手が良い守備をしても笛が鳴ったり、かなり危険なプレーでも鳴らなかったりするものだから、迫力あるプレーへの感動よりも、「今のでファウル?」、「今のがノーファウル?」という疑問のほうが先に出てしまう。だから、ブーイング。
選手たちも、軽いボディコンタクトでもファウルを取ってもらえることがあるため、簡単にピッチに倒れ込むこともしばしば。日立柏サッカー場は、Jリーグの中でも最もスタンドとピッチが近いスタジアムのひとつだから、位置によっては、主審よりもファンの方が近くでプレーを見ていたりする。
前半のある場面で、軽い接触で倒れ込み大げさに痛がる選手に対して、少年ファンが発した「早く立てよ!」という言葉は、妙に胸に響いた。
Jリーグでも激しいプレーがもっと見たい。
もちろん悪質なコンタクトプレーにはファウルが与えられるべきだ。ただし、記者の「本音」を言えば、Jリーグでも正当で激しいコンタクトプレーをもっと見たいし、安易にピッチに倒れ込む姿は御免だ。だから、42分に強く足を踏まれながら、痛みに耐えて直後のプレーで強烈なスライディングタックルを披露した橋本には、大きな拍手を送りたい。
ちなみに76分には、FC東京の東慶悟がゴールネットを揺らしたものの、オフサイドの判定で取り消しに。これは明らかにオンサイドで、東は副審の旗が上がっていることに気がつかず、その間に柏がカウンターでチャンスをつくった。コンタクトプレーに限らず、判定に関して混乱の多かった一戦だが、試合後の記者会見では、FC東京・フィッカデンティ監督、柏・吉田達磨監督ともに、主審のジャッジには言及せず。どうやらJリーグには、“大人”な監督が多いようです。