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南ア、ラグビーW杯準決勝で敗れる。
負傷者続出で、NZにどう挑んだか? 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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posted2015/10/26 14:30

南ア、ラグビーW杯準決勝で敗れる。負傷者続出で、NZにどう挑んだか?<Number Web> photograph by AFLO

南アフリカ代表主将代行のフーリー・デュプレア。彼の統率と正確なキックが接戦の原動力となった。日本のサントリー・サンゴリアス所属の選手でもある。

エディー・ジョーンズが語っていた南アの強み。

 準決勝で、南アフリカは前半を12対7とリードした。トライ数は0対1。ノートライながらリードを奪った。いや、ノートライどころではない。南アは前半、NZ陣の22mラインを一度も突破できなかった。対するNZは7度にわたって南ア陣のゴール前に侵入。それでも1度しかゴールラインを割らせないところに南アディフェンスのすごみがあった。

 「南アはディフェンスにプライドを持っている。アタックには興味がないんだ」とは、日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチの言葉だ。2007年、エディーが南ア代表のテクニカルアドバイザーを務めたとき、プール戦における前回王者のイングランドとの対戦で、前半で大きくリードを奪うと、当時の監督ジェイク・ホワイトはハーフタイムにこんな指示を出したという。

「後半は獲得したボールは全部キックしろ。相手のカウンターアタックに対するディフェンスを練習しろ」

 アタック命のオーストラリアでラグビー観を身につけたエディーは心底驚いたという。だがこの大会で、南アはその戦術を軸に優勝を飾る。決勝は、イングランドとの再戦で、双方ノートライの白熱戦だった。

負傷者続出で戦術が絞られていた南ア。

 伝統的にハードワークを尊び、献身的に身体を張るのが南ア白人の多数派を占めるアフリカーナーのラグビーカルチャー。今大会の準決勝は、負傷者の続出という要因も相俟って戦術を絞った結果、選択されたのがハイパントというオプションだった。

 それは一定の成果を出し、スプリングボクスは前半をリードした。だがそれは、残念ながら、現在の充実したオールブラックスを倒すには十分ではなかった。

 後半は雨が強くなったこともあり、NZもカーターがキックを効果的に活用し、後半40分間で唯一南アのゴール前に侵襲したチャンスにWTBバレットがトライを決めて逆転。逆に南アは前半よりもボール保持時間を増やして攻めたものの、ボールが滑りやすくなったこともあってミスが頻発。後半29分に18対20の2点差に迫ったあとのラスト10分間は、叩いても叩いても壊れない分厚い壁にぶち当たっているように見えた。

【次ページ】 残り2分、オールブラックスの分厚い壁。

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