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もっとゴルフが上手くなりたいだけ――。
1人で米ツアー回る有村智恵の現在地。
text by
南しずかShizuka Minami
photograph byShizuka Minami
posted2015/10/20 18:25
米国の下部ツアーを回る中で「いかに自分が日本で恵まれた環境にいたか気づいた」と語る有村。臥薪嘗胆の時を過ごす。
世界で最も過酷なツアーを楽しんでいる有村。
整った環境で練習出来ること。より精度の高いショットが求められること。難コースに挑戦できること――。
世界中から強豪選手が集結し、プロゴルファーとしての力量を十二分に試される環境を、それでも有村は心から楽しんでいる。
生来の旺盛な向上心から、新しいものを取り入れていくことにもまったく躊躇がない。
その最たる例が「新コーチを自分で探すこと」だ。
米ツアーに参戦するにあたり“チーム作り”は有村の課題の1つだった。日本で長年共に戦ってきたトレーナーやコーチは仕事や家族の都合で日本から離れることができず、アメリカではゼロからチーム作りをすることになっていた。
ゴルフは個人競技だが、プロツアーは周りのスタッフも含めた総力戦といっていい。選手のことを理解し、その選手の持ち味を最大限に引き出すチーム作りは年間を通してツアーで戦うプロの選手である以上、欠かせない条件である。
5月下旬、有村は「自分のゴルフスタイルに合うかも」と自ら“ネット検索”して探しあてたゴルフコーチのパット・ゴスにメールする。世界ランク1位や欧州と米ツアーの史上初同時賞金王にもなったことがあるトッププレーヤー、ルーク・ドナルドのコーチである。最初のメールには返事が来なかったが、それにめげずに再度連絡してみると今度は返事があり、早速ゴスのいるシカゴへ会いに飛んで行ったという。
新コーチの指導で成績も安定してきたが……。
米ツアーで有村のスコアがなかなか伸びない原因はパッティングにあった。
日本とはまったく異なるアメリカの芝で、イメージしたラインと違う方向にボールが曲がることが続き、ついには“イップス気味”になってしまっていたのだ。
ゴスに相談すると、今までのパットの目線を変えることを提案された。すぐさま改善に取り組んだ結果、6月下旬に開催されたレギュラーツアーの試合では2日目まで8位タイと久しぶりに上位に絡むことができた。レギュラーツアーよりコースの距離が短い下部ツアーでは、毎試合のように優勝争いを繰り広げ、トップ10入り率はナンバー1と、成績も安定してきていた。
5月半ばから有村のキャディーを務めているペンサンティは、有村を「プロフェッショナル」と称える。
「愚痴や不満をきいたことがないし、いつでもゴルフ場に行く準備ができている」
だが7~8月のレギュラーツアーでは、5試合中3試合で予選落ちしてしまう。結果を出したいと力んでいたのだろう、さぞかし落ち込んでいるだろう――と思いきや、実際に本人に会ってみると全く違うことを考えていた。
より上を目指すべく、スイングの改善に注力していたのだ。