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参加型レースの最高峰「スーパー耐久」。
首位に立つ埼玉トヨペットの挑戦!
text by
大串信Makoto Ogushi
photograph bySAITAMA TOYOPET
posted2015/10/15 10:45
前列左からドライバーの番場琢、平沼貴之、服部尚貴。スーパー耐久で「埼玉トヨペットGreen Brave」が初優勝を飾った時のチーム記念写真。
有名なドライバー服部尚貴らに乗車を頼むと……。
2シーズン目の去年は、それまで外部のチューニングショップに任せていたセッティングなど、本来ディーラーメカニックには無縁のトラックエンジニアリングも自社に移行して自立の道を選んでいる。自分たちで苦労しなければ自立はできない、自分たちの目標はレースの勝敗のみにあるわけではない、ノウハウを蓄積しなければ意味はない、と考えた末の結論であった。
「1年目に服部尚貴選手、番場琢選手と知り合う機会があって、それで2年目にうちのクルマに乗ってもらえないかとおそるおそる依頼したら快諾をいただきました。彼らのようなプロフェッショナルは、普通、何もわからない店舗メカニックの作った車両に乗るのは嫌がるところですが、信頼していただき感謝しています」
このシーズンは、2人のプロドライバーに加えて埼玉トヨペット代表取締役専務の平沼貴之も加わった。平沼は社員代表のアマチュアドライバーとして本格的にチームに加わり、社員がメンテナンスする車両でレースを戦うという位置づけになる。
3年目の今年には、モータースポーツ室は総勢6名に拡大していた。そこで内々に「シリーズチャンピオン奪取」を年間の目標として2台目の競技車両を自力で製作、戦線に投入した。
「2年近くやっているといろいろ見えてきて、メンテナンス性を良くしたり、自力で配線をやり直したりして軽量化しました」
ラインキングトップに立つも、いきなり試練が。
軽量化された2台目のマシンの威力もあって、3年目の今シーズン、「埼玉トヨペットGreen Brave」のTOYOTA86は開幕戦から上位入賞を続け、ポイントランキングでトップに立ち、シリーズ第4戦オートポリスではついに初優勝を遂げた。だが、岡山国際サーキットで開催されたシリーズ第5戦では試練にさらされた。
「シリーズを考えたとき非常に大事なレースだったのですが、決勝でトラブルが出てしまいました。ピットインを繰り返して直そうとしたのですがダメで、これはもうリタイアかなあと思いました。でも岡山には埼玉から社員応援団が70名近く来てくれていて、その前なのだからなんとか走らせたかった。それならばレース中だけどエンジンを交換しようということになりました。そう言うと、服部さんも『いいよ! 10分でもいいから走らせようよ!』と言ってくれました」
3時間の決勝レース中、チームは1時間半かけてエンジン交換を行い、再びマシンをコースへ送り出した。結果こそ残せず、シリーズポイント争いでは首位をかろうじて守ったものの厳しい立場に追い込まれながら「第4戦で優勝したときも嬉しかったけど、今回は優勝したときよりも嬉しいよ!」と服部は喜んだという。