セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
セリエと食の切っても切れない関係。
サッカーはソウルフードで強くなる?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/10/08 10:40
ミラノ万博で作られた1.6kmの長さでギネス記録となったピザ。自国料理への愛の結晶と言えるだろう。
食のノウハウはイタリアサッカー界の財産。
外国人選手にとっては、英気を養いモチベーションを維持するために、出身国のソウルフードも不可欠だろう。ナポリやインテルの南米出身選手たちが、しばしば集会を開き、アルゼンチン名物の焼肉料理「アサド」で団結心を高めるのは、その一例といえる。
出身国の料理でモチベーションを上げつつ、日々の体力維持と増強をメディテラネア式のイタリア料理で、というのが現在のセリエAスタンダードだ。
今夏のプレシーズンキャンプ中、キエーボやカルピは、選手たちの迅速な疲労回復を促すために、あえて就寝30分前に甘いパイ菓子やヨーグルト、トースト類の夜食を摂らせた。栄養面の管理を含めた食のノウハウは、イタリア・サッカー界の財産ともいえる。
7節でアタランタを下し、'98-'99年シーズン以来の単独首位に立ったフィオレンティーナのシェフ、アンドレア・トラパーニは、フィレンツェの名門料理学校のエグゼクティブ・シェフも務める。ドルチェ(ケーキ類)の達人として知られる彼は、脂肪分を嫌う選手向けにバターを半減させた特製生地のタルトを考案した。
同じく7節でミランを蹴散らし勢いに乗るナポリの専属シェフ、チロ・サラティエッロの自慢料理は、バター抜きのパルマ風リゾットだ。食通で知られるデラウレンティス会長と、遠征先でのメニューについて1時間も話し込むこともある彼は、サッカー少年のママたちの参考になること請け合い、と評判のレシピ本も出版した。
チームの胃袋を預かる彼らシェフたちにとって、何より嬉しいのは、世界中のクラブを渡り歩き、舌も肥えているはずの外国人選手からの「美味しい」の一言だという。
寿司がチームの食事に入る日も?
奇しくも現在イタリアでは、地球上の“食”をテーマにしたミラノ万博が、10月末まで開催されている。先日、取材する機会があったが、入場待ち最大4時間という日本のパビリオンの、あまりの人気ぶりに驚かされた。
イタリアでも「和食ブーム・寿司ブーム」と言われて久しい。セリエAでも、MFボルハ・バレロ(フィオレンティーナ)のように寿司好きを公言する選手も随分増えた。いつか、セリエAのシェフたちが、日々のメニューに寿司を加える日も来るだろうか。