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本田圭佑の経営批判はなぜ問題か。
契約社会における“絶対的タブー”。
posted2015/10/10 10:40
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
ACミランが大敗を喫した4日のナポリ戦後、MF本田圭佑が残した発言が、イタリアで大きな波紋を起こしている。
「ミランの再建には、マンチェスター・CやパリSG並の投資が必要。さもなくばクラブ経営の再編を」
「1億ユーロの補強資金を費やした代表選手揃いのチームがなぜ力を発揮できないのか」
「経営陣、監督、ファン、メディア、イタリアのすべての価値基準を変える必要がある」
チーム低迷の分析と自らの出場機会減少への疑問に端を発したその夜の放言は、監督の采配やクラブの経営方針、イタリア・サッカー界全体への啓発にまで及んだ。
多分に皮肉のトーンを含んだ苛烈な言葉は、本田自身が「イタリアのメディアにも伝えてほしい」と付け加えたことで、翌々日には現地紙など多くの媒体が競って報道。満天下に広く知られることになり、大反響を招いた。
内容は正論、問題になったのは「立場」。
とりわけ『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙のWeb版記事には、ミラニスタだけでなく、インテルやユベントス、ローマやナポリといった他の有力クラブのファンらが多くのコメントを寄せた。ヒステリックな糾弾から冷静な考察まで、彼らは本田発言の是非に声を上げた。
短絡的な拒否反応を除けば、本田の訴えにある程度の理解を示す者も多かった。こういうときは、別クラブのファンの方がかえって冷静な思考に至るものだ。
ただし、ミラニスタであるか否かを問わず、“本田に全面的には賛同できない”という根本的な態度ははっきりしていた。あるユベンティーノの冷静な書き込みに、その理由が集約されている。
「本田の言う事は完全に正論。しかし、彼は言うべき立場にない」
一選手が、雇用主であるクラブの経営に口をはさむことや監督の考え、他の選手の処遇について口出しすることは、欧州の契約社会における絶対的なタブーだ。本田の言葉は、勇気ある告発ではなく“無分別な暴言”として捉えられたのだ。