スポーツのお値段BACK NUMBER
3兆円縮んだ音楽業界の試みに学ぶ。
スポーツ界に大規模な教育投資を!
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byAFLO
posted2015/10/02 10:30
マーケティングを主眼とした会合に登壇したこともあるジョゼ・モウリーニョ。
レアルの元社長やプレミアチェアマンを呼ぼう!
立命館大学との人材育成講座についても、大学の教授陣に加えて、Jリーグが提供する外部参画者(クラブ社長、GM、強化育成部長など)が講師を務めることになっていますが、世界のスポーツ産業のトップランナーに触れ合える機会をつくるところまで踏み込んでもいいと思います。
レアル・マドリーの元社長やプレミアリーグの元チェアマンが日本のために力を貸す、などということは夢物語なのでしょうか。海外の某スポーツメーカーの関係者に聞いたところでは、各国のマーケティング責任者が集うミーティングに、ゲストスピーカーとしてジョゼ・モウリーニョ氏が出席したことがあったそうです。メーカーが世界中のクラブと密接な関係を築き、人脈に関しても太いパイプを持っていることがうかがえるエピソードです。
これからも生まれる才能に充分な環境を。
日本のサッカー界も多くのスポーツメーカーと取引がありますが、ユニフォームを提供してもらうキットスポンサーとしてだけではなく、世界の様々な人材へのアクセスを橋渡しするパートナーとして新たな関係を構築することは十分可能でしょう。
そしてスポーツ界の未来に対する危機感や志を共有できれば、ワールドクラスの知識や経験を語れる講師陣が名を連ね、クラブの経営あるいは指導者などに興味を持つ若者たちを高いレベルで養成する本格的なアカデミーの開設に投資することも決してありえないストーリーではないと考えます。
それぐらいダイナミックな作戦なくして、小さくなっている市場を大きくなる方向へと180度転換するパワーは生まれないはずです。
これからも、第2の本田圭佑や香川真司は日本各地から出てくることでしょう。そうした逸材を擁しながら、市場が縮小し、十分な環境や報酬を用意できず、日本のスポーツ界が空洞化していくとしたら、それほど悲しいことはありません。アイオヴィンが抱いた音楽業界への危機感とその後の行動は、日本のスポーツ産業にも多くの示唆を与えてくれているような気がしてならないのです。
(構成:日比野恭三)