松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山「なんで言ってくれるんだろう」
ゴルフ界を担う仲間、とデイが指名。
posted2015/09/28 16:30
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Sonoko Funakoshi
ホールアウト後の選手を記者たちが囲んで質疑を行う、通称「囲み取材」。松山英樹を囲むとき、どんな第一声を投げかけるか。今季は、その第一声に迷うことが何度かあった。
数字には表れない「ゴルフの内容」に満足できなければ、たとえ数字がそこそこ良くても、松山は「納得できていない」と答える。フェアウェイキープ率とか、パーオン率とか、そういうものがたとえ100%に近い数字を示していても、ショットやパットの微妙な感触に満足できていなければ、彼は「良かった」とは言わず、「全然良くない」と答える。
松山自身の感覚や感じ方が基準ゆえ、予想しにくいこともある。プレーオフ最終戦、ツアー選手権最終日も、実を言えば囲み取材の第一声に少々迷う状況だった。
この日、松山は1番をバーディーで好発進したが、2番はすぐさまボギーを叩いた。8番と9番で2連続バーディー。しかし後半は14番でダブルボギーを喫した。イーブンパーの70で回り、通算スコアもイーブンパー。スコアを伸ばせなかったとはいえ、難コースのイーストレイクで雨続きの難コンディションの下、スコアを落とさなかったラウンドは、客観的に見れば、とても良くは無いが、悪かったわけでもない。
トップ30の中で12位フィニッシュも、客観的に見れば、世界の中で「堂々12位」と言っていい。だが、松山自身はどう感じているのか。その判断は少々難しかった。
本人も、明確な言葉は発しなかった。
「いい形で締め括りたいと言っていたけど、その意味では、どうでした?」
ちょっぴり曖昧な第一声を投げかけると、松山の返答も歯切れが悪かった。
「悪い部分も出て、いい部分もたくさん出ていたので、次につながる感じがします」
今季はどんなシーズンだった?
「いい意味でも悪い意味でも普通だったという感じ。勝てなかったのは残念だけど、勝つためには何が足りないか、何が必要なのか、しっかり考えて来シーズンに繋げたい」
松山自身はとても真摯に取材に対応し、時折「うーん」と考えながら言葉を絞り出すように答えた。だが、今夏ごろから乱れ始めて不安定になったショットは、その後「乱れ」と「回復」を18ホールの中でも4日間の中でも繰り返し、パットも「いい」「悪い」を繰り返し、いい日であってもカップに蹴られる場面が2度3度あったりの繰り返し。
その様子を文字にしているメディアの側が「いいんだか、悪いんだか」と悩む状況だったのだから、アスリートの松山が明確な言葉にできなくても、それは不思議ではなかった。