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山中慎介、V9モレノ戦は最大の試練。
互いのペースを奪い合う神経戦必至。 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byToshio Ninomiya

posted2015/09/21 10:30

山中慎介、V9モレノ戦は最大の試練。互いのペースを奪い合う神経戦必至。<Number Web> photograph by Toshio Ninomiya

9度目の防衛戦で迎える最大の難敵モレノ。サウスポー同士であることはどちらに有利に働くか。

モレノは“ディフェンス・マスター”。

 だが「頂上決戦=激闘」のイメージを、この試合に持ってくるのは難しい。

 なぜならモレノは、やりにくいことこのうえない相手だからだ。

 フロイド・メイウェザーのごとく、相手のパンチをことごとく外してしまう“ディフェンス・マスター”。被弾しないことを一番に、のらりくらりとかわしながら細かく当ててポイントを取っていく技巧派だ。

 手足が長く、懐が深く、上体が非常に柔らかい。プロ39戦のキャリアでKO負けは1度もなく、ダウンも2度しかないという。山中はこれまで世界戦9試合のうち7試合でKO勝ちを収めてきたが、渾身の“神の左”を当てるのは極めて難しい作業だと言えるだろう。

 帝拳プロモーション代表で、世界のボクシングに精通する元WBC世界スーパーライト級王者の浜田剛史氏はモレノを「今の時代に合ったボクサー」と表現する。ラウンドマスト方式はラウンドごとに必ず優劣を決めて採点に反映させるため、パンチをもらわずに軽いパンチでも当てていければポイントは取れる。いくら試合がつまらなくなろうとも、モレノは気にしない。面白くない試合になろうとも、己の勝ちのみに徹することができる。

お互いにペースを崩さないタイプ。

 この試合は言わば「頂上決戦=神経戦」。ミクロ、いやマクロレベルの駆け引きがポイントの優劣を決めることになる。

 じゃあ王者が不利になるのかと言えば、そうとは思わない。

 山中は派手な左ストレートばかりが取り上げられるが、彼の大きな特徴は決して己のペースを乱さないことにある。つまりは、彼も試合巧者。無理をせず、ジリジリと自分の距離を持ってパンチの照準を合わせていき、後半に勝負をかけていくパターンが多い。終盤に入っても、大きく呼吸を乱すことはほぼない。

「自分のペースを保って戦っていければ、疲れることは別にないんです」

 それが山中の口グセ。練習の積み重ね、減量に苦しまないコンディションもその理由にあるだろうが、終盤になれば相手との体力差が如実に表れる。

 ただこれはモレノにも言えること。終盤でも体力が落ちず、もうひと踏ん張りができる。彼もまた、自分のペースを崩さないタイプだからなのかもしれない。

 どちらが自分のペースを守り、相手のペースを崩すか。ここに勝敗のキーワードがあるような気がしてならない。

【次ページ】 クリーンヒットではなく、まず“当てる”。

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