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ドライバーの命を危険にさらした、
タイヤサプライヤー、ピレリの不実。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2015/08/30 10:40
フェラーリ移籍初年度の今季、ここまで2勝にとどまっているベッテル。しかし、危険なタイヤで命を危険にさらすストレスは、レースで勝てないストレスの比ではない。
ピレリが出した驚くべき“責任転嫁”声明。
ひるがえって、今年のベルギーGPでのピレリの対応はどうか。
ベッテルの事故を受けて、ピレリがその日に出した声明は驚くべき内容だった。
「2013年11月に、われわれは同一セットのタイヤによる最大周回数を規定すべきことを提案していましたが、これは受け入れてもらえませんでした。提案ではプライムとオプションのタイヤの最大走行距離を、それぞれレース距離の50%と30%に設定していました。もしこれが適用されていれば、事故が起きたミディアムタイヤの最大周回数は22周でした」
レース後、フェラーリのマウリツィオ・アリバベーネ代表は「ピレリと言い争うつもりはないが、全チームにピレリのエンジニアがいて、彼らは40周は持つと言っていたし、われわれがレース前の午前11時に行なった戦略会議の決定も知っていた」と、ミディアムタイヤで29周を走りきろうとしたフェラーリの作戦に無理はなかったと主張した。
タイヤに限らず、モータースポーツでは事故はつきものである。だからこそ大切なことは、事故を発生させた当事者たちによる、事故に見舞われた者への敬意である。
マシントラブルでクラッシュしても、ドライバーがチームを安易に批判しないのはその信頼関係があるからだ。
ピレリには「なぜタイヤがバーストしたのか?」という技術的な原因究明だけでなく、「なぜベッテルはあそこまで怒りを爆発させたのか?」を再考し、信頼関係を構築する努力も行なっていただきたい。