F1ピットストップBACK NUMBER
ドライバーの命を危険にさらした、
タイヤサプライヤー、ピレリの不実。
posted2015/08/30 10:40
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
放送禁止用語を連発するほど、セバスチャン・ベッテルは怒りを露わにしていた。
「答えはいつも同じ。タイヤがカットされた、デブリだ、ボディワークに問題があったんじゃないか、ドライバーがコースをはみ出した、とか(ここで『ふざけんじゃない』という意味の放送禁止用語)。
ニコ(・ロズベルグ)がはみ出していないと言ったら、はみ出していないんだよ。なんで僕たちドライバーがウソをつく必要がある? 僕もはみ出していない。
でも、タイヤがバーストした。しかも今回が初めてじゃない(ここで『クソッ』という意味の放送禁止用語)。あの事故が200m手前で起きていたら、僕はいまここに立っていないよ」
ベルギーGP決勝レース。チェッカーフラッグまであと2周を切った42周目のオー・ルージュ~ラディオンを登りきった先にあるケメル・ストレートで事故は起きた。
3番手を走行していたベッテルの右リアタイヤが、時速300km以上で突然バーストしたのである。
ベッテルはなんとかコントロールを保ってピットに帰還したが、実はベルギーGPでは、金曜日にもニコ・ロズベルグが同様の事故に見舞われていた。
体重測定を無視し、テレビ局の前で不満をぶちまけた。
しかしピレリは、それを「調査の結果、外的要因」として片付けていた。
そういった伏線もあって、リタイアしたベッテルは通常行なうべき車検場での体重測定を無視して、世界各国のテレビ局が待つミックスゾーンへと向かい、冒頭のコメントをぶちまけたのである。
タイヤに起因した事故は今回が初めてではなく、長いモータースポーツではこれまでも何度も起きている。
最近では2013年のイギリスGP。ベッテルが「今回が初めてじゃない」と指摘したのが、それである。