セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
ラツィオ会長「クソ程の価値もない」。
暴言に逆襲を期す2つの地方クラブ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/07/31 10:40
レッジーナ時代には中村俊輔とチームメイトだったロベルト・ステッローネが、いまやフロジノーネの監督だ。ラツィオとの予算差は数倍に及ぶが、一泡吹かせることができるか。
2クラブとも、史上初のセリエA昇格を決める展開!
騒動から2カ月半が過ぎた4月28日、カルピが1909年のクラブ創設以来、初めてのセリエA昇格を決めたとき、カストーリ監督は「我々のA参戦は、イタリアサッカーのイメージアップになるはずだ」と快哉を叫んだ。
カルピから18日遅れで、フロジノーネもダイレクト昇格を決めた。やはり1912年の創設後、初めての1部昇格だった。
クラブカラーである青と黄色のフラッグが町中で打ち振られる様を見ながら、フロジノーネのスティルペ会長はロティートへ皮肉を込めたメッセージを送った。
「カルピに続いて、我々もセリエA昇格を成し遂げた。サッカーで成功を収めるには、計画性と競争力が必要なのはもちろんだが、謙虚さも大事ではないのかね?」
地理的には離れているカルピとフロジノーネだが、最少レベルの予算規模や育成部門を重視する経営方針など、よく似通った点が多い。スタジアムの収容人数もそれぞれ2万強と1万少々、ミニマムスケールといっていい。
フロジノーネの監督は俊輔や大黒の元チームメイト。
対照的なのは、それぞれセリエAで初采配を振るう2人の監督だ。
戦術マニアを自認する61歳のカルピ監督カストーリは、プロとしての選手経験を持たないまま、26歳で指導者に転身した。最底辺カテゴリーから始めて、ようやく檜舞台に上り詰めた苦労人らしく、自らの職業への喩えが優雅だ。
「サッカー監督というやつは、手元にある生地でスーツを縫い上げる仕立て屋のようなものだ」
一方、38歳のフロジノーネの若手指揮官ステッローネは、かつてナポリやトリノなどで鳴らしたセリエA経験豊富な元FWだ。イタリア時代のMF中村俊輔(横浜M)やFW大黒将志(京都)ともチームメイトだった。
'11年に現役を引退した後、フロジノーネへそのまま残り、U-15年代チームの監督として指導者人生を始めた。3年前にトップチームの監督になると、3部から2年連続昇格という大仕事を成し遂げた。
「うちの武器はセリエAでも同じ。献身性、インテンシティ、そして集中力だ。流れ星みたいにあっという間に消えないよう、残留目指して最後まで戦うよ」
セリエBへ簡単に戻るつもりはさらさらない。フロジノーネも、カルピも、A経験のあるリーズナブルな中堅選手をフリートランスファーやレンタルでかき集めている。早めにチーム編成を終えて、プレシーズンマッチで汗を流しながら、来たるべき初めてのセリエA挑戦に備えるのだ。