セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
ラツィオ会長「クソ程の価値もない」。
暴言に逆襲を期す2つの地方クラブ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/07/31 10:40
レッジーナ時代には中村俊輔とチームメイトだったロベルト・ステッローネが、いまやフロジノーネの監督だ。ラツィオとの予算差は数倍に及ぶが、一泡吹かせることができるか。
“知名度の低いクラブを昇格させるな”という圧力も。
さらに、それが協会上位理事の発言という事実は、カルピとフロジノーネの傷を余計に深くした。ロティートの発言内容には、セリエBリーグ機構会長に対し“知名度の低いクラブを昇格させるな”と圧力をかけたとほのめかしたものもあった。
「まるで中世の封建制度だ。地方クラブへの敬意はないのか」(ユベントスGMマロッタ)
「私はカルピとフロジノーネを応援する。セリエAに挑む権利は誰にもある」(インテル監督マンチーニ)
少数のクラブや世論はロティートの暴言へ猛反発したが、放映権料の増額をもたらしたフィクサーを表立って批判したくないウディネーゼやキエーボなど、多くのクラブの会長らは事件に対し無視を決め込んだ。ミランのガッリアーニ副会長のように、はっきりロティートを擁護した者すらいた。
自己弁護の達人であるロティートは、当然のように「違法録音だ」「誤解だ」と強弁した。自らの過ちを認め、謝罪などするはずがなかった。
セリエA昇格を決めることが、何よりの意趣返しになる。
北部エミリア・ロマーニャ州モデナの郊外にある町カルピは人口約7万人、南部ラツィオ州のフロジノーネにいたっては、4万7千人ほどの小さな自治体だ。
幾度かの破産を乗り越えながら、どちらも創設から100年を越える歴史を受け継いでいる。そういうクラブが無数に集まって、幾層にも及ぶイタリアの下部リーグを形成している。
カルピがまだ5部のアマリーグにいた頃から6年間、昇格の歩みをともにしてきたMFパシューティは、たまらず抗議の声を上げた。
「ロティートの言葉は相当癪に障った。もし俺たちが最後まで首位でいられたとして、カルピがセリエAに上がれないなんておかしいだろ」
2つの地方クラブの怒りは彼らの心の内に取り残されたが、彼らは言われっ放しでは終わらなかった。現実にセリエA昇格を決めることが、ロティートへの何よりの意趣返しになることを知っていたからだ。