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最後は「友達の多いヤツ」が有利!?
MotoGP後半戦、王者たちの三つ巴。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2015/07/19 10:40
オランダGPの表彰台は、今季2度目のチャンピオン揃い踏みとなった。近年まれにみる混戦を抜け出すのは果たしてどのライダーだろうか。
目の前にターゲットがいる時のロッシは強い。
とは言っても、ライダーとしてピークを迎えているチームメイトのロレンソを何度も打ち負かしているあたりは、さすが9度の世界王者である。
確かに一発の速さでは若いころに敵わないが、目の前にターゲットがいるときの粘り強さは驚嘆に値する。
シーズン前半戦の3勝はすべて接戦を制したもので、そのうち2回はマルケスと接触し、因縁を残すことになった。
もしかすると、そうなるんじゃないかと僕は思っていた。
というのも、ウインターテストで好調だったロッシが、「今年の目標はタイトル獲得。当然、チャンピオンのマルケスをターゲットに戦う」と言い切っていたからだ。
これまでもロッシは、チャンピオン争いをしたライダーとコース上でも舌戦でも衝突することが多かった。そういう状況になったらマルケスと何か起きるのではないかと思っていたが、現実にその通りの展開となっている。
マルケスはマシン作りに失敗するも、昨年型に戻し復調。
対照的に、ウインターテストで3連覇確実と言われるほど素晴らしいスピードを見せつけたマルケスは、開幕戦からドタバタのレースが続いた。
その原因はマシン作りの失敗に尽きる。ウインターテストの舞台であるマレーシア・セパンであまりにも調子が良すぎたことが、2015年型RC213Vのバランスを崩してしまったようだ。
セパンでは、「もうやることがない」とマルケスがいうほどの仕上がりだっただけに、ホンダ陣営も軌道修正に時間がかかってしまうことになった。
現在のMotoGPマシンは、恐ろしいほど進化した電子制御と厳しい燃費など多くの制約の中でライダースキルの差が出にくくなっている。
唯一、ブレーキングでライダースキルの差が出る傾向にあるのだが、第8戦オランダGPで昨年型のシャーシー(メインフレームのみで、あとは今年型とのミックス)に戻してから、マルケスの走りが復活した。
今年は苦労したレースが多く、それがまたライダースキルを上げることになったのだろう。