F1ピットストップBACK NUMBER
史上最年少ドライバーに論争勃発!
フェルスタッペンは本当に危険か?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2015/06/14 11:00
カナダGPまで7戦を戦い、最高位7位、リタイヤ4回のフェルスタッペン。ランキング14位はホンダ勢の2人よりも上位だ。
ドライバーからの批判は続いたが、周囲は案外冷静。
フェルスタッペンをめぐる口論はまだ続いた。
同じ日にFIAが主催する合同記者会見で、フェリペ・マッサがフェルスタッペンを批判したのだ。それに対して、フェルスタッペンが「僕は自分のドライビングスタイルを変えるつもりはない。他人を批判する前に、自分の過去の事故を見直したほうがいい」とやり返した。
元F1ドライバーで、現在イギリスのテレビ解説を務めているジョニー・ハーバートは、若手ドライバーへ対するベテランドライバーのプレッシャーは一種のマインドゲームであって、真っ正直に受け止める必要はないと主張する。
「シューマッハだって、デビューした当初はよくアイルトンに説教されていたけど、全然聞く耳を持たなかった。それでも、チャンピオンになった。むしろ、だからチャンピオンになったというべきだろう。レースだから事故が起きるのは仕方がないし、事故を起こしたドライバーがぶつけた相手に謝罪する必要もない。レースとはそういうものだ。
何も、事故を起こしていいと言っているのではない。事故から学ぶことは大切だが、それは自分自身の問題であって、他人の指摘ですることじゃない。その証拠に今回フェルスタッペンを非難しているグロージャンとマッサだって、過去に何度も事故を起こしてきたけど、相手に謝罪なんてほとんどしていないじゃないか」
「問題はドライビングではなく、過剰反応」
タイトルが懸かった最終戦で、タイトルを争う当のシューマッハから激突された元王者のジャック・ビルヌーブもこう言う。
「私は彼から謝罪も受けていないし、そもそも謝罪なんて求めなかった。今回のモナコでのフェルスタッペンの事故も、よくあるレーシングシンシデント(事故)。だから、私はモナコGPでのフェルスタッペンの事故自体を責めるつもりはないし、自分のスタイルを変えるつもりはないという彼の発言も間違っているとは思わない。
問題は、事故に対する非難に、フェルスタッペンが過敏に反応してしまったこと。何を言われても、堂々としていればいい。彼が成長しなければならないとしたら、ドライビングではなく、むしろそこだ」
レースとは、相手よりも早くチェッカーフラッグを受けるというスピードの戦いであると同時に、そこにたどり着くために自ら信じた道を走るドライバー同士の信念と信念のぶつかり合いでもある。
だから事故が起き、その事故に対する意見も食い違う。正しいか正しくないかではなく、信じるか信じないか。そのことを教えてくれたモナコGPとカナダGPの2週間だった。