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新国立競技場の迷走はチャンスだ!
「聖地」に相応しい設備と思想を。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2015/05/24 10:50

新国立競技場の迷走はチャンスだ!「聖地」に相応しい設備と思想を。<Number Web> photograph by AFLO

1300億円の予定が、3000億円ほどに膨らんでいるという新国立競技場。屋根の形が変わると大きくイメージが変わらざるをえないが果たして……。

計画の見直しは「新たなスポーツの聖地」の始まり。

 世界的にみても、このような変更は珍しいことではない。1976年のモントリオール五輪のオリンピック・スタジアムは、開閉式屋根を完成させることができなかった。2008年の北京五輪メインスタジアムとなった北京国家体育場も、コストを抑える、安全面への配慮から当初のデザインにあった開閉式の屋根を中止した。新国立競技場もその轍を踏むことになった。

 ただ、これを1つの機会と捉えることはできる。

 従来の国立競技場は、今回の建設計画の前から老朽化や設備面などの問題ですでに使用できない競技があることが問題となっていた。例えば陸上競技の場合、国立競技場のトラックは8レーンで、オリンピックや世界選手権の基準である9レーンに足りない。そのため、基準が制定される前の1991年に世界選手権を開催したのを最後に、これらの大会を開催する資格を得られていないままだった。

 また、2002年のサッカーワールドカップ日韓大会でも、国際サッカー連盟の基準に達していなかったため、会場に立候補していない。その結果として「東京に新たなスポーツの聖地を」という声もあったし、新国立競技場建設への期待も大きかった。

イベント活用を重視することは大事だが……。

 しかし、新国立競技場のもともとの計画案は、「新たなスポーツの聖地」になるためには微妙なところがあった。

 オリンピック後の運営において、音楽コンサートなどのイベント活用も重視されてきたのだ。開閉できる屋根はそのために重要だったし、音響などの設備も、スポーツ以外の利用に配慮したプランになっていた。

 確かに、集客力のあるスポーツの大会は決して多くないし、多角的な運用ができるのはのちのちの運営にメリットがあるだろう。

 一方で、例えば陸上大会を開くにはサブトラックが必須だが、その設置は計画に含まれていなかった。オリンピックの際は仮設トラックを設置する予定だが、それではオリンピック後は陸上大会に使用することができない。新たな聖地として長期間位置づけられるスタジアムとしては、不足している点が多かったのだ。

【次ページ】 本当に知恵を出し切ったのか、やり尽したのか。

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