スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
レアル、CL敗退決定で監督解任も?
“元凶”ペレスの元で迷走は続く。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byREUTERS/AFLO
posted2015/05/20 10:50
シーズン前半はバルサ全盛期を超えた、と言われるほどのサッカーを展開させたアンチェロッティ。来季の監督続投はあるのか。要注目だ。
超攻撃的スタイルを支えていた中盤の選手達を放出。
原因の1つは、昨季アンチェロッティが苦労して見いだしたベストの攻守バランスを台無しにした、フロレンティーノ・ペレス会長の“流行もの買い”にある。
破格の移籍金でベイルを獲得した昨季、レアル・マドリーはBBC(ベンゼマ、ベイル、クリスティアーノの頭文字)の3トップに加えて両サイドバックのマルセロとカルバハルも果敢に攻め上がる、非常に攻撃偏重なスタイルを打ち出した。
この超攻撃的4-3-3で戦いながら攻守のバランスを保つことができたのは、中盤の3人(シャビ・アロンソ、ディマリア、モドリッチ)が守備面で相当なハードワークをこなしていたからだ。
そんな現場の状況を知ってか知らずか、ペレスはそのうちの2人を昨夏にあっさり手放してしまう。しかも同タイプの代役を補強することもなく、代わりにやってきたのはハメス・ロドリゲス、トニ・クロース、ケイル・ナバスらワールドカップで名を上げた旬のスター選手ばかりだった。
専売特許だったカウンターに苦しめられる皮肉。
こうして再びゼロからのバランス探しを強いられたアンチェロッティは、守備は専門外のクロースをアンカー、トップ下が本職のハメスやイスコをインサイドハーフにコンバートし、慣れない守備面のハードワークに従事させることを試みた。
攻撃時に発揮するタレントは折り紙付きの彼らが、守備のタスクもしっかりこなせるようになれば、より攻撃的なスタイルを打ち出したスペクタクルなフットボールを実現できる。実際シーズン前半はそんな指揮官の思惑通り、多くの試合で守備の不安を攻撃力でカバーすることができていた。
しかし攻撃偏重システムに内在する守備面のリスクが、強豪との対戦が増えた後半戦に入って目立つようになる。
8戦交えて1勝3分4敗と大きく負け越したアトレティコとのダービーをはじめ、バルセロナ(1勝1敗)、バレンシア(1分1敗)、ユベントス(1分1敗)らとの対戦で露呈した今季の弱み。それは、以前はレアル・マドリーの専売特許だったカウンタースタイルに対する脆さだ。