アンチェロッティの代わりなど存在しない。

　他にもベイル、ベンゼマ、ペペ、ラモスら主要メンバーの故障がシーズン終盤に相次ぎ、シーズンを通してフル稼働してきたイスコやクロース、マルセロ、カルバハルらも終盤戦は疲労を溜め込みパフォーマンスを低下させた。

　その傍ら、イジャラメンディ、ケディラ、ルーカス・シウバ、ヘセ、チチャリートといった控え選手はほとんど出番を与えられなかっただけに、CL敗退後にはチームマネージメントに失敗した指揮官の責任を問う声も聞こえてきている。

　クロップ、レーブ、ベニテス、ロペテギ、ビラスボアス、ミチェル、ジダン……。

　早くも後任候補の名が多数挙がっているが、監督の交代によって問題が解決するわけではないことくらい、冷静に考えれば誰にでも分かることだ。

　事実、複数のメディアが行なったアンケートでは、アンチェロッティの続投を望む声が軒並み60％前後を占めている。CL敗退のショックが冷めやらぬタイミングで得られたこの数字の意味は大きい。

　素人会長がチーム強化の全権を握るこの特殊なクラブにおいては、必要な選手を放出し、必要でないポジションの選手を続々と連れてくる会長の暴挙を黙って受け入れ、選手起用についても会長が望む優先順位を忠実に守りつつ、最高の結果を出し続けなければならない。

　そんな無理難題をアンチェロッティほどそつなくこなせる監督は、恐らく他にはいないだろう。

7シーズンで1度しかリーグ優勝を手にしていない。

「みなさん、ようこそサンティアゴ・ベルナベウへ。マドリディスモにとって幸せな日ではないにもかかわらず、お越し頂いたことに感謝しています。今日、我々のファンが悲しみに暮れていることは分かっています。だが知ってほしい。この敗退は我々がさらなる努力を行なうための力をもたらし、さらに我々を強くしてくれることを」

　CL敗退の翌日、来月行なわれるリバプールOBとのチャリティーマッチの発表セレモニーの壇上にて、ペレスは神妙な面持ちでそう挨拶していた。

　過去7シーズンで1度しかリーグ優勝を手にしていないのは、レアル・マドリーにとって1954年以降初めてのことだという。

　はたして彼は、その原因がどこにあるのか本当に分かっているのか。

　悲願のデシマ（CL10冠目）獲得から僅か1年。レアル・マドリーの周囲からは、再び暗雲が立ち込めはじめたように思えてならない。