詳説日本野球研究BACK NUMBER
谷繁監督がついに決断した若返り。
全力で走る中日が帰ってきた!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/05/03 11:00
昨シーズンまではソフトバンク二軍どまりだったのが、新天地で才能を開花させた中日・亀澤恭平。明るい性格のムードメーカーで、ベンチまわりでのパフォーマンスもファンの間で話題だ。
4度続けて1.9秒前後を記録する全力投球。
足の速い一塁走者が二盗に要するタイムは3.20秒程度と考えていい。これを阻止するにはピッチャーのクイックとキャッチャーの二塁送球の合計が3.19秒以下でなければならない。投手のクイックの標準タイムが1.20秒なのでキャッチャーは1.99秒で二塁に送球すれば俊足の二盗を阻止できる計算になる。桂がどうだったかというと、私が4回計測したイニング間の二塁送球タイムは以下の通りである。
<1.87秒→1.92秒→1.89秒→1.87秒>
いずれも一級品である。ほとんどの捕手は、全力で投げていたアマチュア時代とくらべると、プロ入りと同時にイニング間の二塁送球で手を抜く。しかし、桂は毎回のように全力で二塁送球をしていた。一軍でプレーできる喜びを1.9秒台のスローイングで表現するかのようだ。そして29日にスタメン出場した松井雅は打者走者の一塁到達で4.3秒未満を計測、手抜きのないプレーを足で表現した。ポスト谷繁をめぐる2人の争いは、変貌する中日をよく象徴している。
エルナンデスの“珍しさ”、亀澤の確実さ。
29日は6番エルナンデスのプレーが光った。0-0で迎えた4回表、平田、ナニータの二塁打などで先制点を挙げ、さらに無死二、三塁とチャンスは続く。ここでエルナンデスが初球をバントして三塁走者をホームに迎え入れている。
ただのスクイズではない。エルナンデスの一塁到達タイムは私のストップウォッチで3.96秒を計測。明らかにバントヒットを狙うスピードである。セーフティスクイズを敢行するメンタリティやその際に見せる全力疾走など、外国人としては非常に珍しい部類に入ると思う。
4月29、30日の試合では、2番・二塁手としてスタメン出場した亀澤が攻守両面で目を引いた。28日はベテランの荒木にスタメンを譲っているが、スタメンに復帰すると29日が5打数3安打1打点、30日が4打数1安打。亀澤のバッティングの最も大きな特徴は、反動を封印しているところである。ごく小さい始動とステップで打つ形を作るのだが、軸がブレる恐れのある過剰な足上げやバットの引き、あるいは上下動を極力排し、確実なミートを優先する。
29日の第3打席では1死二塁の場面で1ボールからの変化球をセンター前に弾き返し、これを巨人・橋本到が後ろに逸らしている間に3点目の走者がホームイン。7回には2-2のボールカウントから器用なバット操作でレフト前に流し打ち、9回は1ボール2ストライクから軽く合わせてレフト前にタイムリーを放ってチームの勝利に貢献し、4月30日現在の打撃成績は、規定打席未到達ながら3割5分2厘を記録している。