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<J助っ人外国人から日本への提言> ドラガン・ストイコビッチ 「不屈の精神を魂に刻め!」
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph bySports Graphic Number
posted2015/05/04 10:00
1965年3月3日、旧ユーゴスラビア生まれ。94年~01年、名古屋でプレー。08年~13年は同クラブの指揮官として活躍した。
真の勝者になるための「ネバー・ギブ・アップ」精神。
日本代表への二つ目の提言は、「勝者のメンタリティー」を植え付けていくことだ。
私は名古屋グランパスの監督時代、強さと美しさを兼ね備えた攻撃サッカーを展開するチームを作り上げ、クラブをJリーグの頂点に初めて導くことができた。
その過程で行なったのは、私なりの「プリンシプル(指針)」や「ディシプリン(規律)」をもとに、戦術、テクニック、コンディショニングなど、すべての面で選手をレベルアップさせていくことだった、魅力的なサッカーは、明確な指針や規律があってこそ、初めて具現化できる。事実、私が監督就任時に選手にまず尋ねたのは、「私のサッカー哲学を信じて、最後までついて来られるか?」ということだった。
と同時に選手に問い質したのは、「自分たちは必ず勝者になるのだという、鋼の意志を持てるか?」という点だった。
たしかに日本人選手たちは、私が現役でプレーしていた頃に比べれば、はるかにレベルが上がっていた。だが真の勝者になるためには、何よりも「ネバー・ギブ・アップ」の精神を体現することが求められる。
テクニカルなプレー以上に、戦い抜く闘争心こそ本質。
おそらく現役時代の私は、テクニカルな選手だというイメージが強いだろう。しかし私自身は、最後まで諦めずに戦い抜く姿勢を最も大切にしていた。その意味ではファイティング・スピリットこそ、私が信じるサッカーの本質だったと言っていい。
幸い、グランパスの選手やスタッフは私を受け入れてくれたし、とことんまでついてきてくれた。彼らには今でも感謝しているし、そうやってクラブ全体が一丸になれたからこそ、あの美しい、そして感動的な優勝はもたらされたのだと思う。
代表の場合、クラブチームと同じように完成度の高い集団を作り上げるのは難しいかもしれない。だが、優れた監督を起用することと、不屈の精神を魂に刻むことは、日本サッカーを真に開花させるための大きな契機になる。