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<J助っ人外国人から日本への提言> ハンス・オフト 「CF不在でなく、原点回帰が課題」
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byKoji Asakura
posted2015/05/03 10:00
1947年6月27日、オランダ生まれ。マツダなどで指導、1992年~1993年に日本代表監督。その後も磐田などJのクラブ監督を歴任。
コンパクトでクイック、そしてアグレッシブに。
選手の特徴として指摘できるのは、クイックネスとプレーの正確さ、チームスピリットだ。日本人選手は10mのスプリント能力に関しては、超一流のものを持っている。ショートパスの正確さやターンの速さ、オフ・ザ・ボールのフリーランもしかり。
一般的に体が小さいと言われるが、フィジカルは決して弱くないし、メンタルの強さも備えている。事実、私が率いていたチームには、それこそサムライのようなハートを持つ面々が揃っていた。日本代表は、選手のこのような特性を活かすべく、コンパクトでクイック、そしてアグレッシブなサッカーを展開するチームを作っていかなければならない。
たしかに世界の強豪を敵に回した場合には、カウンターからチャンスを狙わなければならないケースも出てくる。しかしプレースタイルを変える必要はない。コンパクトなラインを保ったまま、中盤に少しだけプレーエリアを下げるだけでいい。
これはボクシングに喩えればわかる。サウスポーのボクサーが、タイトルマッチに臨んだとしよう。相手がチャンピオンだからといって、右にスイッチするだろうか?
答えは否だ。実際には構えを変えずに、距離の取り方と攻撃のタイミングを変えれば済む。むやみにスタイルを変えるのは、逆に命取りにさえなってしまうからだ。
指導者として優秀であればパスポートの色は関係ない。
Jリーグ自体のレベルの底上げ、人材流出の防止など、日本が考えていかなければならない問題は他にもある。国内リーグの発展なくして代表のレベルアップはないし、代表の新陳代謝を促していく上でも、次世代の選手を育んでいくことは鍵になる。代表監督選びにはギャンブル的な要素もつきまとうが、日本の文化とサッカー、そして選手を理解し、指導者として優秀であればパスポートの色は関係ない。極論すれば、日本人監督である必要さえない。
いずれにしても、重要なのは原点回帰、自らのストロングポイントを再認識していくことになる。Jリーグ発足から23年目、日本サッカーは「これが自分たちのスタイルだ」と胸を張って言い切ることができるだけの基礎を、着実に築き上げてきたはずだ。