スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
バルサの外国人依存が代表に波及。
デルボスケに戦略の「軸」はあるか。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byMarcaMedia/AFLO
posted2015/03/25 10:40
代表の練習で選手の間を闊歩するデルボスケ。64歳の名将にタレントを束ねる明確な方向性が求められる。
コスタではなく、連係に強みがあるアルカセル?
特に1年前から執拗にこだわるコスタをはじめ、W杯以降に試したラウール・ガルシアやカジェホンらはカウンタースタイル向けのアタッカーであり、所属クラブとは異なる代表のスタイルにフィットできていない。それだけでなく、彼らを組み込むことでチームとしても戦い方が中途半端になってしまうという悪影響まで生じているのは問題だ。
個人的には、狭いスペースでも高精度のフィニッシュと連係プレーをこなせるアルカセルにセンターFWを任せ、強さと機動力が武器のコスタはあくまでも切り札として使うべきだと考えている。今もスペイン最大の強みはブスケッツやコケ、イスコ、カソルラらで構成する中盤のボール支配力にある。ならば前線にもその強みを最も生かせる人材を起用するべきではないか。
逆にコスタを中心に据えたいのならば、フランス戦のようにコスタを生かせる人材で周囲を固めればいい。問題は、最近のスペインがどっちつかずなメンバー構成で戦うことが多いことなのだ。
再びカウンタースタイルのクラブから選ばれた選手が。
4カ月ぶりに代表ウィークを迎える今回、デルボスケが発表した24人のリストにアルカセルの名はなかった。膝の故障が完治していないとはいえ、復帰後の2試合で共にゴールを決めるなど復帰直後から高い決定力を発揮していただけに残念だ。
代わりに選ばれたのは、昨年11月のデビュー組で唯一生き残ったモラタ、そして初招集のビトーロだ。ユベントスで定位置を確保している前者はU-21代表でも結果を出しているため、スタイルへの適応に問題はない。だがカウンタースタイルのセビージャで活躍するサイドアタッカーについては、やはり代表のスタイルにフィットできるかどうかが鍵となるだろう。
スペインは3月27日にホームでウクライナとEURO予選、同31日にアウェーでオランダとの親善試合を戦う。同勝ち点の2位で並ぶウクライナとの直接対決は、前半戦の山場となる一戦だ。そしてオランダ戦では、もちろん大敗を喫したW杯のリベンジを果たさなければならない。
この2試合で何よりも求められるのは結果だ。デルボスケにははっきり勝ちにいく采配を貫きつつ、目指すチーム作りの方向性を打ち出してもらいたい。