スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
バルサの外国人依存が代表に波及。
デルボスケに戦略の「軸」はあるか。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byMarcaMedia/AFLO
posted2015/03/25 10:40
代表の練習で選手の間を闊歩するデルボスケ。64歳の名将にタレントを束ねる明確な方向性が求められる。
外国人3トップの個人能力に依存するようになったバルサ。
だがそのバルサが衰退期を迎え、また今季は外国人3トップの個人能力を生かしたスタイルに変わってきたことで、そのアイデアをそのまま代表に持ち込むことができなくなってしまった。
そのためデルボスケはW杯以降、バルサを含めた複数のチームから新たに選手やシステムを取り入れて新たなスタイルを模索しはじめたのだが、これが思いの外迷走しているのだ。
昨年9月の親善試合フランス戦ではアトレティコからチェルシーに移籍して間もないコスタを1トップに据え、チェルシーのセスク(トップ下)とアスピリクエタ(左SB)、アトレティコのコケ(ピボーテ)とラウール・ガルシア(右MF)を先発に起用した。まだ代表ではノーゴールだったコスタの特徴を生かすべく、チェルシー型4-2-3-1にアトレティコ勢を組み込んだ成果は、枠内シュートゼロのまま0-1で完封負けという散々な結果となる。
4日後のEURO予選第1節マケドニア戦と10月の第3節ルクセンブルク戦ではシルバが下がり目のファルソヌエベ、その前にペドロ(第3節はコスタ)とアルカセルが2トップ気味に並ぶ、バルサが今季前半に試していた4-3-1-2を採用。
11月の第4節ベラルーシ戦ではシルバ、セスク、コスタらがケガで不在だったこともあり、右からカソルラ、コケ、ブスケッツ、イスコが中盤で横に並び、ペドロとアルカセルが2トップを組む4-4-2をテストした。
デルボスケの迷走に軸はあるか?
明らかな格下相手に難なく勝利したこの3試合とは裏腹に、10月9日のEURO予選第2節スロバキア戦ではシルバとイニエスタを偽ウイングに起用する慣れ親しんだ4-3-3で必勝を期しながら、やはりセンターFWのコスタが機能せずまさかの敗戦を喫してしまう。
そして11月18日の親善試合ドイツ戦では3日前のベラルーシ戦で際立った活躍を見せたイスコをトップ下に起用する4-2-3-1で挑むも、代表経験の浅いメンバーを多数起用したこともあり0-1で敗れている。
もちろん現段階で様々な選手やシステムを試すのは悪いことではない。ただ中盤にテクニシャンを揃えたポゼッションスタイルという明確な軸がある上で、プラスアルファのオプション作りを行っていた以前とは違い、最近のデルボスケはその軸がぼやけた状態のまま、あれこれと実験を繰り返している印象がある。